日米同盟に不可欠な次のステップ: 指揮統制 (C2)の近代化

Mr. James Schoff
Sasakawa USA Senior Director
Mr. Chris Johnstone
Senior Adviser and Japan Chair
March 2, 2024

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歴史的な国家安全保障戦略国家防衛戦略の発表から一年が経ち、日本は、厳しい安全保障環境下で脅威に迅速に対応できる、より信頼性の高い自衛隊の構築に向けて、驚くべきスピードで動き出している。防衛力強化の二年目に入り、日本の防衛費は2022年比ですでに50%増加している。反撃能力、弾薬備蓄、自衛隊の即応性への多額の投資に加え、自衛隊の大規模な構造改革も発表されている。特筆すべきなのは、日本が陸海空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を2025年までに新設するという計画である。これは、長い間議論され、先延ばしになってきた重要な改革であり、その実現は、統合性の強化が自衛隊の抑止力と対処能力の鍵であると主張してきた意見が勝利したことを示している。

日米同盟の変革における次のステップは指揮統制アーキテクチャーの近代化である。防衛力強化に向けた日本の動きが加速していることを受け、その重要性はますます高まっている。日本がより有能な軍事パートナーになるにつれ、日米両政府は、その同盟をより実戦的なものにすべく、新たな体制を構築しなければならない。指揮統制アーキテクチャーの変革は、日米同盟の信頼性を著しく高め、東アジアにおける抑止力の強化に役立つだろう。日本が反撃能力の獲得を目指す中、これは特に喫緊の課題である。日米両国は、戦術(標的の特定と攻撃)においても戦略(紛争のエスカレーション管理)においても連携し、武力を行使できるようにならなければならない。そのような状況は初めてのことである。

在日米軍の改編

日米同盟における既存の指揮統制体制では、その目的を達成できない。1960年代の日本は、米国にとって、アジア全体で米軍の作戦を展開するための場所でしかなかった。在日米軍はその頃からほとんど変わっていない。在日米軍の権限と人事は主に、日本に駐留する5万人以上の米軍(海軍、海兵隊、空軍、陸軍)関係者を対象に、日米同盟の協定を施行することに限られている。在日米軍はインド太平洋地域で最も重要な米軍能力の一つであるにもかかわらず、3つ星の在日米軍司令官の権限は統合作戦において限られており、日本に駐留する各軍は、ハワイの司令部における各軍の監督下にある。

日米両政府は、既存の同盟指揮統制が不十分であることをますます認識している。米国議会は、2024年国防権限法において、日本における米軍司令部の構造を改編することの実現可能性を6月までに調査することを国防総省に求めた。日本による統合作戦司令部の設立を補完することを目指した動きである。しかし、近代化の必要性は明らかであるものの、同盟の指揮統制を改善するための具体的な解決策は複雑であり、無数の利害関係者が関わっている。この課題に関する日米間の対話を促進するため、筆者らは一年以上にわたって、日米同盟に長らく関わってきた幅広い専門家、退役軍人や政府高官、両国の現職の高官と協力し、同盟のアーキテクチャーを近代化する方法を検討・議論してきた。昨年5月には中間報告書を作成し、最終報告書もまもなく発表する予定である。本稿では、この取り組みを踏まえた筆者らの個人的見解を述べる。

日本における米軍統合司令部

こうした議論における主な結論は、日本に米軍の統合作戦司令部を常設すべき、という点である。これは日本の新しい統合作戦司令部の日常的なカウンターパートとして機能しなければならない。このビジョンを具体的にどのように達成するかは日米両政府が決めることだが、筆者らとしても、数回にわたる日米間のワークショップと多くの専門家の意見を参考に、一般的な提言をいくつか行うことができる。

日本の新しい統合作戦司令部は、陸海空自衛隊の各幕僚長と同格の4つ星将官の下、240人程の規模で、東京の防衛省内に設置される予定である。日本の統合作戦司令官の米国のリーダーシップカウンターパートはインド太平洋軍司令官となるが、同軍司令部は幅広い地域の責任を負っているため、日本との日々の関係にあまり集中することができない。日米間の任務の計画や遂行に集中するため、米国は、在日米軍をインド太平洋軍の下に置き、あらゆる能力を持つ3つ星の統合司令部に変えて、同じく3つ星の日本の統合副司令官と日常的に協力できる体制を整えるべきである。自衛隊の統合作戦司令部と密に調整を進めることのできる組織を日本に置くことは、日米同盟にとっても大きなプラスとなるだろう。

この役割を果たすには、新しく生まれ変わった在日米軍の権限を強化し、必要な人員を揃えなければならない。また、深刻な有事における作戦を支援するため、必要に応じて規模と責任を拡大できる能力を持たなければならない。現在の在日米軍は比較的小規模で、約150人の人員が配置されている。在日米軍を変革させるには、さらに100人くらい人員を追加し、インド太平洋軍が承認した二国間演習、訓練、任務を計画・実行する権限を与えなければならないだろう。新しい在日米軍の最終的な規模は、これらの任務の大きさに合わせて決まるだろう。この取り組みのため、連邦議会が資金を計上する必要があるが、米国の国防予算が8,000億ドルであることと、国防戦略が中国の「刻々と深刻化する脅威(pacing threat)」に焦点を当てていることを考えれば、その額は大きくはないだろう。このような追加的な資金を調達する手段の一つとして、「太平洋抑止構想」が考えられる。これは国防総省の予算を使い、同盟国やパートナー国の能力を強化することを含め、中国に対する抑止力を強化する取り組みである。

新しい在日米軍の司令官は、日本政府と関わる米軍の高官として、既存の職責を維持する可能性がある。それに加え、日本の統合作戦司令部のカウンターパートとして日常的な業務にも携わり、さらなる権限を獲得することになるだろう。改編された在日米軍は、日本の防衛やインド太平洋地域における有事に対応する作戦の支援など、明確な責任範囲を持つべきだが、インド太平洋軍の指示に沿った変更が可能な体制にすべきである。

在日米軍の新しい統合司令部には、恒久的に配属された部隊がなくてもよい。日本に駐留する米軍の大部分は、インド太平洋軍の傘下にあるハワイの各軍司令部の権限の下、現在と同様の活動を日常的に行うことになる。しかし、統合作戦司令部の体制が整えば、日米両国は、平時から大規模な有事に至るまで、必要に応じて二国間の軍事作戦を拡大することができる。日本の能力の拡大は、朝鮮半島や台湾海峡、あるいはそれ以外の地域での大規模な有事において、日本がますます重要な役割を果たすことを意味する。日本における米軍の統合作戦司令部は、危機において日米間の緊密な連携を確保する一助となるだろう。

日米指揮統制の統合

米国は、在日米軍を変革する際、日本と協力し、二国間の統合計画調整所を設置すべきである。これは、特定の二国間任務の計画・演習・遂行を支援できる常設のものであるべきだ。日本の統合作戦司令部が設立され、カウンターパートとなる米軍統合司令部が設置されれば、次の段階は、同盟の作戦をリアルタイムで計画・支援できる常設の二国間統合計画調整所を立ち上げることである。現在、そのような体制はない。

これは政治的に難しい課題である。特に日本では、軍隊に対する憲法上の制約が依然強く、米軍と他国の衝突に巻き込まれることへの懸念が根強い。しかし、日米同盟の指揮統制をより統合すべきであることは間違いない。

両国の国民の理解と支持を得るため、日米両政府は、二国間の指揮統制(C2)アーキテクチャー構築の指針となる原則を明確にすることから始めるべきである。これらの原則には、以下の内容を含めることができるだろう。

  • 双方の政治指導者に対する説明責任を維持するため、日米の指揮系統を同じ形にしつつも二国間で分離する。法的・政治的な理由から、米韓のように真に統合された司令部は実現不可能かつ不要である。より緊密に統合し、同盟の目的に資する二国間任務を支援することを目指すべきだが、そのような中でも分離を維持する必要がある。
  • 二国間任務の計画と実施においては、各国の法的権限を尊重する。第一の原則を踏まえ、二国間任務は、日本の集団的自衛権も含めて、各国の憲法・法律の範囲内でなければならない。
  • 合同の二国間計画調整事務所に人員(日米両国の制服組)を共同配置する。この人員は、日本における各国の指揮当局を支援しつつ、同盟の任務を遂行することになる。
  • 二国間の作戦の文民統制を確保する。日米両政府は、同盟の方向性を決めるため、文民主導で意思決定や対話を行っている。新たな二国間共同調整調整所は、こうした対話と連携すべきである。
  • 米韓連合司令部や米豪統合作戦司令部など、他の二国間同盟との関係を強化することで、情報共有を拡大し、連携を深める。

在日米軍を強化し、常設の二国間計画調整所を設立すれば、日米同盟はより統合される。同盟としてシームレスに危機に対応し、平時から協力を強化することによって、抑止力が高まり、インド太平洋地域もより安定するだろう。この調整所は、防空・ミサイル防衛、情報収集・警戒監視・偵察(ISR)、兵站と人員・物資の「輸送」、サイバー防衛、アセット防護、海洋安全保障、捜索・救助、(一部米国が支援する)日本の新たな反撃能力の運用といった二国間任務を監督することができるだろう。

今こそ大きく考えるべき

これは大きなステップであり、議会の支持を得ながら実行するには時間と資源が必要だ。しかし、今年の日米間のハイレベル会合により、実施の方向性と枠組みが決まるかもしれない。 岸田首相が四月にホワイトハウスを訪問する予定で、その後すぐに日米の防衛・外務閣僚が集う「2+2」会議が開かれる。両国首脳は日米同盟の指揮統制の近代化を二国間の議題とすべきである。そうすれば、「2+2」会議で今後の方針を定め、詳細な計画の指針となる原則を検討し始めることができる。

60年にわたる日米同盟の古い取り決めを近代化すべき時は今である。脅威や技術が変化してきただけでなく、日本が統合作戦司令部を新設し、防衛力を飛躍的に向上させることで新しいチャンスがもたらされるからだ。政治、文化、法律、制度において複雑な問題が山積みだが、だからと言って行動を起こさない訳にはいかない。今こそ、この古いアーキテクチャーから脱却し、待ち受ける有望な未来に向かって進むべきなのだ。

クリストファー・ジョンストーンは米戦略国際問題研究所の上席顧問兼日本部長。

ジェームズ  L.  ショフは米国笹川平和財団の シニア  ディレクター。

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米国笹川平和財団による本記事は、戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies)が2024年2月1日に発行した「A Vital Next Step for the U.S.-Japan Alliance: Command and Control Modernization」の正式日本語訳です。原文は戦略国際問題研究所の以下ウェブサイトに掲載されています。 https://www.csis.org/analysis/vital-next-step-us-japan-alliance-command-and-control-modernization

日米NEXTアライアンス・イニシアチブは、日米間で外交・安全保障・技術政策分野を横断する新たな協力関係を構築するため、幅広い分野の政策・技術専門家(政府内外)を招待し、二国間対話、ネットワーキング、共同提言の策定を行うフォーラムです。日本財団の支援を受けて笹川平和財団米国が設立した本プログラムの目的は、日米共通の利益により大きく貢献し、ますます複雑でダイナミックになる地政学的環境における新たな課題に備えられるよう、日米同盟を強化することです。2021年に設立された本イニシアチブは、重複する課題も多い二つのトピック(1) 外交・安全保障政策、2) 技術とイノベーションの連結)に取り組んでいます。笹川平和財団米国のシニアディレクターであるジム・ショフが本イニシアチブを主導しています。

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