序文
2023年春に開催された「NEXTアライアンス会議(NAC)」は、3つの差し迫った傾向を踏まえ、将来に向けて日米の指揮統制(C2)の関係をいかに調整できるかを探った。その傾向とは、1)地域の軍事バランスの変化により、抑止力の維持や攻撃の撃退に米軍と自衛隊の統合が不可欠となっていること、2)技術的進歩と作戦上のニーズが相まって、より統合された部隊の運用概念が求められていること、3)反撃能力の開発や自衛隊の常設統合司令部の設立など、日本が防衛力を拡大し、軍事的な「統合性」を向上させようとしていることである。日米同盟における1960年代のC2体制は、長年にわたり少しずつ断片的に近代化されてきたが、より包括的な改革が必要である。
2023年の3月10日から13日まで東京で開催されたNEXTアライアンス会議には、政府、軍、学界、シンクタンク、民間企業から日米の専門家約40人が参加し、週末も使って一連の議論を行った。日本政府関係者によるさまざまな安全保障のトピック(新しい国家防衛戦略、日本の防衛力整備計画、国家安全保障戦略など)に関するブリーフィングに続き、2日間にわたるワークショップ、メディアブリーフィング、横田基地の視察が行われた。春のNEXTアライアンス会議は、「日米NEXTアライアンス・イニシアチブ」の優先課題分野に焦点を当て、米国笹川平和財団が毎年オフサイトで開催している2つの「リトリート」の一つである。
今回の会議の目的は、日米同盟におけるC2の関係を取り巻く複雑な問題について、両国の専門家の間で実質的な対話を促進し、相互理解を深めるとともに、これらの問題に対する認識を一般市民に広めることであった。具体的には、1)現在のC2の構造、2)日米同盟のC2のモデル、3)政治的・法的・制度的な検討事項、4) C2をめぐる将来のニーズ、に焦点を当てた。以下の要約は、4日間にわたり議論・診断されたと筆者が理解している内容であり、合意文書ではない。また、二国間で行われた今回の対話の基本ルールを尊重し、発言者を特定しない形で書かれている。
目次:
本プロジェクトは、米国笹川平和財団のNEXTアライアンス・イニシアチブが「タスクフォース」として2022年に立ち上げたものである。2つの傾向が現在の日米の指揮統制(C2)の有効性を損ない複雑化させている一方で、変化が最も必要とされる今、3つ目の傾向がより緊密な二国間安全保障協力の機会を生み出しているという前提に基づいている。第一の傾向は、地域の軍事バランスの変化を踏まえ、抑止力の維持や攻撃の撃退において、米軍と自衛隊の統合が不可欠になっていることである。第二の傾向は、技術の進歩と作戦上のニーズが相まって、より統合された部隊の運用概念が求められていることである。これは、並行して軍事活動を行う従来の「マルチドメイン」モデルを超え、デジタル・トランスフォーメーションを活用して相互に深く連結したシステムである。さらに、長距離精密打撃能力を含め、日本も自らの新たな能力を検討している。これは、日米同盟における長年の両国の役割分担と任務に疑問を投げかけ、C2の再考を促すことになるだろう。同時に、日本は軍事的な「統合性」の向上に重点を置いている。今後1~2年で自衛隊に常設統合司令部を設置する方向で動いているが、これによって新たな機会も開かれるだろう。
こういったことはすべて、日米の指揮体制の関係の再考が急務であることを示唆している。二国間の体制を国家改革と効果的に整合させるため、自衛隊が在日米軍(USFJ)や米インド太平洋軍(INDOPACOM)と今後いかに連携できるか、実践的で有益な調整を検討すべきだ。また、日本の領土(と日本における米軍基地)が以前よりも地域の軍事作戦と密接な関係にあるため、こうした改革は防衛政策や配備の問題に関するタイムリーな意思決定にも役立つだろう。この地域におけるいかなる紛争においても、日本は最前線に位置する国である。ロシアによるウクライナ侵攻は、起こりうる紛争に対して真に備えることの重要性を示している。東アジアで抑止力を維持するには、日米双方の軍事力を統合させ、より効果的に活用する必要がある。しかし、日米両国の洗練された指揮系統、状況把握の共有、タイムリーな意思決定、十分に調整されたシームレスな活動がなければ、それは実現できない。
これまで本タスクフォースには、さまざまな専門知識を持つ幅広い分野の専門家が、柔軟な(一部のコアメンバーを中心に、複数の専門家が入れ替わって個別の対話に入る)形で参加してきた。その目的は、日米の防衛界を巻き込んで、既存の指揮系統が直面する二重の課題(上述)について議論することである。また、法的、政治的、制度的な制約を尊重しつつも(軍の統一まではできなくても、努力を統一する)、どのような要素があれば、より統合され作戦に役立つ日米同盟のC2体制を設計できるのかを検討することである。2022年には、今回の東京での4日間の会議に向けて情報を得るため、トラック2とトラック1.5の小規模な円卓会議をハイブリッドで開催した。これらの円卓会議の概要は、発言者を特定しない形でまとめ、米国笹川平和財団のウェブサイト(NEXTアライアンス・イニシアチブのウェブページ内の「Research Areas」における「Defense Cooperation」)で公開している。2023年には、フォローアップのための円卓会議をさらに開催し、秋にアナポリスで第2回NEXTアライアンス会議を開催する。2024年には最終報告書を発表する予定である。
上述の傾向を踏まえ、NEXTアライアンス会議の参加者は皆、日米同盟のC2体制をある程度近代化する必要があると同意した。ある元米軍将校は、「日米両国にとって指揮統制を正しく行うことがいかに重要かは、どれほど強調しても足りないくらいである。危機や紛争など、国家安全保障に対する直接的な脅威に対処するとき、国家は権力を付与し、国力を適用する。その意思決定のサイクルにおいて、指揮統制の構造と権限は最も重要な要素である」と指摘した。
彼はさらに、「1)戦略的に『考え』、2)作戦レベルの調整枠組みを使って『計画』し、3)国家戦略ビジョンを実現するため、作戦枠組みで求められている成果に向けて戦術的に『行動』する、というプロセスを推進するのは、最終的には枠組みである。戦術的に『考え』、『計画』し、『行動』しているにもかかわらず、なぜ競争に打ち勝つことができないのかと悩む国家をよく目にする」と補足した。
上記に基づき、NEXTアライアンス会議の対話は、次の3つの疑問点に焦点を当てた: 1) 近代化された理想的なC2の枠組みとは何か(最も重要な「ニーズ」は何か)、2) この目標の障壁となる実際の「課題」は何か、3) 日米同盟の統合をより生産的な方向に導くのに役立つ「機会」はあるか。これらのいくつかは、第3章(「主要テーマと検討事項」)でより詳細に取り上げているが、まず簡単に要約する。
2.1機会
3点目(機会)について、日本で豊富な経験を積んできたある米政府関係者は、「我々は今、以前とは全く異なる日本を相手にしている」とし、安全保障面では「過去2年間で、それ以前の23年間よりも大きな変化があった」との見方を示した。同氏は、「権威主義の侵略に対する恐れ」により、日米政府のリーダーが必要な改革を推進するための「特殊な政治的空間」が作り出された、とした。また、「日米同盟の調整と指揮統制の近代化は、今後何年もの間、我々の役割、任務、能力をめぐる政策の対話において、中心的な取り組みとなるだろう」と述べた。
さらに、NEXTアライアンス会議で参加者らは何度も、2011年の東日本大震災後に日本の対応を支援した「トモダチ作戦」における日米協力に言及した。ある米政府関係者は、これを「日米同盟の重要なストレステスト」と呼び、「インド太平洋軍司令官の直接の権限の下、二国間の作戦・調整の責任と作戦上の権限を与えられた統合任務部隊(JTF)の司令官を日本に置くことの有用性」が明らかになった、と述べた(図1、2参照)。
また、この対応に携わったある元自衛官は、「自衛隊と米軍の人々の間の強い個人的な絆と、防衛コミュニティ間の相互信頼の基盤が、情報共有を極めて円滑にした」と指摘した。他方、「人間関係に基づく信頼と信用は危機の際に大きな助けとなるが、それだけでは不十分である。我々が現在直面している安全保障上の課題に適切に対応するためには、強固な体制と仕組みが必要だ」とも述べた。特に、福島原発の状況に関する認識や情報が共有されなかったこと、さまざまな危機的状況について真に「理解を共有」するための緊密なコミュニケーションが困難であったことを強調した。
図1:米軍の災害救援統合支援部隊(2011年当時)の構成[1]
図2:トモダチ作戦における自衛隊と米軍の基本調整メカニズム[2]
もちろん、米軍が統合支援部隊をアドホックで創設しなければならなかった主な理由は、日本に配属された5万4,000人の軍人の大半を指揮または統制できるような形で在日米軍が設計されていなかったからである。在日米軍司令部には約140人のスタッフしかおらず、ほぼ同数の現役軍人が在籍している在日米国大使館に比べて半分以下の規模である[3]。在日米軍は、自らの使命が「日米同盟を管理し、平時・危機・有事において地域の作戦を支援するための致死的な態勢と即応態勢を米軍の各軍種が維持できるよう、日本国内の状況を整え、日米同盟を支援するための行動を調整・同期させる能力を日米間のメカニズムに付与すること」であると宣言している[4]。
機会に関して言えば、参加者らは、日本が計画している常設統合司令部(PJHQ)の新設は、連絡窓口と責任の合理化により、これまでとは異なる調整を行うきっかけになると指摘した。現在、日本の統合幕僚長は、複数の米国のカウンターパートを抱えており、防衛大臣に助言を行い、大臣の命令がきちんと実行されていることを確認する責任も担っている。危機管理においてこの体制があまりに非効率だったため、東日本大震災に対応するために自衛隊が出動した3日後には、防衛省が初の大規模な統合任務部隊に作戦管理を命じ、東北方面総監を指揮官に任命した[5]。
トモダチ作戦の経験から学べることは多い。米国のあるワークショップ参加者が指摘したように、「インド太平洋軍司令官は、作戦や政策の調整におけるワンストップショップとしての役割を原則担うべきだが、実際には、他に35カ国に対する責任も負っている」。日本を拠点とする米軍部隊も、日本をはるかに超える責任を担っている。例えば、横須賀を拠点とする米軍第7艦隊は、活動範囲がアジア全域で1億2,400万平方キロメートルにわたる。沖縄を拠点とする第3海兵遠征軍(III MEF)は、これまでイラク、アフガニスタン、ソマリアなどの国々における軍事作戦を支援してきた。別の元米軍関係者は、日本の統合任務部隊司令官とインド太平洋軍司令官が直接連携していることを示唆する日本の組織図を見たことがあるとしながらも、「それが現実的だとは思わない」とした。「インド太平洋軍が統合部隊として出動することはしばしばだが、統合任務部隊の司令官となるのを見たことはない」と彼は説明した[6]。
実際、東日本大震災に際し、日米両国は、より効率的かつ効果的なトモダチ作戦の実施に向け、新たに創設された統合任務部隊を即座に連携させることで、C2の関係の強化に迅速に取り組んだ。ワークショップのあるアメリカ人参加者は、「日本の常設統合司令部は、将来的に米国の新しいC2の構造のドッキングステーションとなるかもしれない。在日米軍の作戦をすべて管理し、平時には計画を立案し、危機時には指揮を執る米国のC2が可能かもしれない」と期待を示した。
日米同盟において運用効率と二国間の相乗効果を向上させるため、過去数年間に行われたすべての漸進的な調整と適応が前進するという機会もある。その中でも特筆すべきは、2006年の横田基地における共同統合作戦調整所(BJOCC)の設立とその後の投資、2015年の「日米防衛協力のための指針」改訂による同盟調整メカニズム(ACM)と共同計画策定メカニズム(BPM)の創設である(図3、4参照)[7]。同盟調整メカニズムの枠組みには、必要に応じて、共同運用調整所(BOCC)と、各自衛隊及び米軍各軍間の調整所(CCC)が含まれる。これらの「調整所」は、自衛隊と米軍の活動に関連する作戦調整を行う際や、両国間の部隊レベルの調整に活用される。例えば、2016年の熊本地震、北朝鮮による弾道ミサイル発射、尖閣諸島周辺の海域・空域における中国の活動への対応などである[8]。
図3:同盟調整メカニズム(ACM)の構成[9]
もっと最近の話では、2022年後半に日米両国は横田基地に二国間情報分析セル(BIAC)を設置した。両国の情報部員から収集した情報を共同で分析・処理し、相互安全保障協力を行うことが目的である[10]。約30人のスペシャリストが同じ場所に拠点を置き、情報を共有・分析することで、「半分の投資だけでフルに能力を発揮することができる」と、ある在日米軍関係者は説明する[11]。
図4:共同計画策定メカニズム(BPM)の構成[12]
最後に、NEXTアライアンス会議の参加者は、2023年1月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)の共同発表で表明された見解に頻繁に共感を示した。同発表は、「統合された形での抑止力強化に向けてそれぞれの国の新たな国家安全保障戦略及び国家防衛戦略が軌を一にしていることを認識」し、「両者のビジョン、優先事項及び目標がかつてないほど整合していることを確認した」という文言で始まっている。これはメディア向けに書かれた空虚な言葉ではない。むしろ、国家安全保障に関する日米両国の考え方、計画、行動において、これまでで最も重要な一致を反映した、意義深い認識である。日米両政府がこうした変化に対応し、相互の利益を最大化するために、C2体制を近代化する明確な機会があることを意味する。
2.2課題
日米同盟の C2 近代化をかつてないほど実現可能にしている機会がある一方で、克服すべき課題も数多く残されている。全体的な課題の一つは、武力行使に関して米軍と自衛隊それぞれが持つ権限のミスマッチである。これは日米の法的枠組みの根本的な相違に基づく。米国の軍事行動の法的根拠が大統領の行政権に由来するのとは対照的に、日本の自衛隊は立法府(国会)に従ってのみ行動できる[13]。日本におけるC2の機能は、憲法第65条と第72条に基づいている。それらは、行政権を内閣に与える他、内閣を代表し、自衛隊を含めて「様々な行政部門に対する統制と監督を行う」ための法案を国会に提出する権限を内閣総理大臣に与えている[14]。
NEXTアライアンス会議のワークショップに参加したある元自衛官は、自衛隊が全面的な軍事作戦を行うことが許される2つの状況、すなわち「武力攻撃事態」(つまり「日本に対する組織的かつ計画的な武力行使」)または「存立危機事態」(日本にも同時に脅威となる、友好国に対する武力攻撃)のプロセスについて説明した。いずれの場合にも、武力行使は「必要最小限度」に限られた最後の手段でなければならず、内閣官房が作成し、国会の承認を得た「対処基本方針」に従わなければならない[15]。このプロセスの概要を図5に示す。外国の軍隊の行動が日本の「平和及び安全に重要な影響を与える」場合、自衛隊が後方支援、捜索救助活動、その他の措置を講じることが別の法律で認められているが、このような支援は戦闘現場に近い場所や危険な場所で行うことはできない[16]。要するに、自衛隊が米軍と統合した作戦を行う場合は、ほぼ全て政治的プロセスによって制限され、厳しく管理されるだろうということだ。
加えて、ある元米軍将校は、日米の法的相違は権限だけにとどまらず、軍の説明責任にも波及すると指摘した。例えば、米軍兵士は、統一軍事司法典の法的管轄下にあり、軍隊は指揮官に、指揮官は文民統制に説明責任がある。一方、日本の憲法(第76条)は「全司法権」を最高裁判所に与えているため、自衛隊員は国内裁判所の法的管轄下にある。軍事司法制度が別途ある訳ではない。また、日本の法典は、海外で犯した過失犯罪に関する日本人の訴追を認めていない。さまざまな点で、日米の法的アプローチは、武力行使の「理由」や正当性を扱う「戦争の正当な理由の追求(jus ad bellum)」だけでなく、「戦闘中の手段の規制(jus in bello)」(認められた武力紛争法に準拠した敵対行為の「方法」)についても異なる。このような相違は、統治パラメータが異なるため、日米が真に統合された指揮権を発展させる上で障壁となるだろう。
図5:日本政府による武力行使の承認プロセス[17]
さらに、ワークショップに参加したある日本の元官僚は、「最小テンプレート・アプローチ」の限界と、計画案や法案が提出された後の国会における「水増し」傾向について話した。行動方針が作戦上の必要性と現場の状況に基づいてすでに限定されている中、政治的に好ましい形に変えるため、政治家たちがそれをさらに希釈するのである。現在、自衛隊は作戦の柔軟性を厳しく制限され、許容される活動だけを列挙した短い「ポジティブ・リスト」の下で動いている。自衛隊が実行できない特定の行動を書いた「ネガティブ・リスト」方式に移行することに国会が同意しない限り、この状況は改善されないだろう、とその元官僚は述べた。ある元自衛官は、日本の防衛政策は概して「軍事的合理性」よりも「政治的妥当性」を好むが、これは変わりつつある、と述べた。この分野で何らかの成果が得られたとしても、米国の政治家に比べて、日本の政治家の方が軍事作戦に関してより多くの権限を保持するため、現場で日米の将校が持つ権限のミスマッチが生じることは避けられない。
問題は日本側だけではない。C2をどのように近代化するにせよ、現在の米国のアプローチをある程度調整しなければならない。多くのアメリカ人が、さまざまな理由から、それを好ましくないと考える可能性がある。今回参加した、ある元米軍関係者が説明したところでは、NATOや米韓のように極めて緊密で、うまく連携し統合されているC2構造であっても、ある程度は「参加国の明確な国益のために交渉される調整」が伴う。彼はさらに、「原則として、国家指揮統制ほどは努力、焦点、目的、計画、実行が統一されない」と付け加えた。C2近代化によって意思決定の柔軟性が制限されたり、米軍が拘束されて米国の即応性に悪影響を及ぼしたりするという考えに基づき、米国の政策立案者や軍司令官が不満を抱く可能性がある。日本で新たに副統合軍が構成され、インド太平洋軍の権限の一部がそこに委譲されることが提案されれば、同軍はそれを望まない可能性がある。NEXTアライアンス会議参加者の多くが、これらの問題に日米両政府が迅速に対処すべきだとしたが、新たなC2の枠組みについてコンセンサスを得るには時間がかかるかもしれない。
別の大きな課題は、日米が同じように戦場の状況を把握し、十分な安全性を確保しながらリアルタイムで最新情報を交換できるように、シームレスに十分な情報を共有することである。これはどのような統合または連合のC2体制にとっても課題であるが、日米両国が2007年に軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結し、情報共有改善のための付随的枠組みである「情報保全についての日米協議(BISC)」を設けて以来、そのプロセスは遅々として進まず、漸進的である[18]。両国は2007年以来、情報交換の量を増やし相互信頼を高めるという、重要な成果を上げてきた。しかし、米政府関係者らは、より高いレベルの同等性と相互運用性を達成するため、日本のアプローチの継続的な改善を求めている。
日米同盟のC2近代化における課題は、法的なもの(ある意味憲法をめぐるもの)、政治的なもの、官僚的あるいは制度的な柔軟性の欠如、文化的なもの、技術的なものなど、異なる方法で分類することができる。改善は不可能ではないが、あまり期待しすぎない方がよいことを示唆している。同盟におけるすべての作戦上のニーズを満たすような理想的なC2体制を紙上で描けば、大体どのようなものであっても、上記のようないくつもの障害にぶつかり、その結果、妥協せざるを得なくなる。妥協点を注意深く検討すれば、何もしないよりは良いことが見て取れるため、何らかの有益な形でC2を近代化できる可能性が高い。
2.3ニーズ
最も重要な疑問点は、日米同盟のC2近代化を計画するための、作戦上の問題やニーズが何かということである。これこそがあらゆる統合C2設計の背後にある決定要因である。韓国における米韓連合軍司令部(CFC)が、オーストラリアと隔年で行われるタリスマン・セイバー演習や、中米・カリブ海地域の「統合省庁間タスクフォース(JIATF)南方」と異なる理由はここにある。特定の任務や領域に焦点を当てるのか、それとも複数の領域や統合された任務に携わるのか。特定の作戦地域に重点を置くのか、それとも国や地域全体に及ぶのか。二国間だけの構成にするのか、それとも他のパートナーにも適応できるようにするのか。結局のところ、これらの疑問点には日米両政府が答えを出さなければならないが、NEXTアライアンス会議でもいくつかのアイデアが示された(何点かは「主要テーマと検討事項」の章でより詳細に模索する)。
NEXTアライアンス会議のさまざまな参加者が、日米同盟におけるC2のニーズの一つがスピードであると何度も提起した。朝鮮半島における米韓両軍のモットー「今夜戦う(fight tonight)」がモデルとして何度も言及された。ほとんどの参加者は、中国と北朝鮮が今のところ地域紛争を望んでいないだろう、と分析した。しかし、状況が変われば、中国と北朝鮮は、米国や同盟国の関与を抑止するため、警告なく「強い攻撃」をするかもしれない、と参加者らは考えている。特に台湾有事について、あるワークショップ参加者は、「中国は迅速に、圧倒的な武力を行使し、物理的な攻撃とサイバー攻撃、偽情報の嵐、そして宇宙領域での妨害を組み合わせるだろう」と述べた。別の参加者は、中国が状況を「横にエスカレート」させ、米国と緊密な関係にある地域を攻撃するよう、北朝鮮やロシアをけしかける可能性が高いと考えた。そのようなことが起きた場合、自衛隊と在日米軍の統合部隊や連合部隊をハワイから調整することは理想的ではない。
ある元米軍将校は、この地域での一刻を争う意思決定について、自身の経験を語った。ある朝、明確な目標がない状態で日本に飛来する北朝鮮のミサイルを早期警戒センサーが検知した時には、交戦すべきか、より広範な警戒態勢を敷くべきかについて悩んだ。また、日本沖で航空機事故が発生した時には、大規模な捜索救助活動が行われ、米・日・豪の部隊が参加した。いずれの事例においても、在日米軍とインド太平洋軍の間で情報伝達や調整を行う間に貴重な時間が失われ、情報が食い違ったり、作戦のどの側面で「誰が責任者なのか」という疑問が生じたりもした。このような経験から、ミサイル防衛や近隣の捜索救助活動に関連する特定の状況において、在日米軍が「支援される」側になるための手順が改善された。しかし、日米が将来的に日本周辺の統合作戦区域(JOA)内の部隊と即座に戦う必要があるかもしれないことを考えれば、これは小さな前進に過ぎない。
C2近代化における別のニーズとして、NEXTアライアンス会議の参加者らは、政府と両軍の強固な文民・政治的リーダーシップと意思決定の連結を強調した(「政治的意思決定と軍事行動をシームレスにつなぐ」という言い方をした人もいる)。ある元自衛官とある元政府関係者は、トモダチ作戦での経験と、日米の調整を促進するため、2011年3月22日に創設された「ホソノ・プロセス」の重要性を語った。これは、細野豪志首相補佐官が日本側の政治的リーダーとして日米合同調整会議で果たした重要な役割を指す。細野氏のカウンターパートは米国大使館のジム・ズムウォルト首席公使であった。
ある元米政府関係者は、調整会議に出席した当時を振り返り、機能停止した原子炉を管理する東京電力から詳細な情報を得るのに苦労した、と話す。「ある時、アメリカ人は皆部屋を出るように言われた。しばらく大きな声が聞こえていたが、私たちが部屋に戻ると、東京電力は以前よりずっと協力的になっていた」とのことだ。
ある日本人参加者は、ホソノ・プロセスの例に基づき、同盟調整メカニズムの改革を提案した。たとえば、同メカニズムの日本側の名目上の責任者として、「必要に応じてではなく、事前に」内閣レベルの政治家を指名することである。同メカニズムでは、日米両国の国家安全保障会議(NSC)のトップレベルまで、高い地位の参加者を関与させることができるが、それに向けた具体的な準備はこれまでされてこなかった。
同盟調整メカニズムでは、「必要に応じて他の関係省庁」が関与することも認められているが、前述の日本人参加者は、これも事前に決められると述べた。別の日本人参加者も同意見で、「軍事活動と非軍事活動の間に明確な線引きはできない」と指摘した。両氏は、いくつかの文民省庁(総務省、(海上保安庁が所属する)国土交通省など)を同盟調整メカニズムの常任メンバーに加えることを推奨した。あるアメリカ人は、これに補足する形で、「許される行動とそうでないものを事前に話し合うため、不測の事態に向けた計画において、日米同盟全体の文民省庁や官僚が参加する必要がある」と述べた。
全体として、NEXTアライアンス会議の参加者らは、幅広い視点からC2近代化のニーズを考えた。彼らは、将来の日米同盟のC2は、複数のドメイン環境と広い地理的範囲にわたって機能する必要があると述べた。また、平時から武力攻撃事態に至るまで、段階から段階へと円滑に移行する必要があるため、状況に応じて拡大・縮小するように設計されたしても、日米同盟のC2は常設される必要がある、とも話した。ある元米軍将校は、「(友軍と敵軍が明確に識別された)動的な共通作戦図(COP)を共有し、共通の目標の背後にある政治的意思決定(権限付与)を合致させ、目標を達成するために綿密に計画・調整された行動をとり、統合されたアセットを活用し、展開に基づいてリアルタイムのフィードバックと調整を行う必要がある」と述べた。参加者の一人は、日米同盟の新しいC2構造の主要な役割は、「活発な有事計画を通じた共同および統合能力の開発」であると語った。あるアメリカ人参加者は、「理想の実現が目標だが、現実的にはそれに向けた最適化を目指すべきだ」と話した。
最後に、あるアメリカ人は、「敵の攻撃から指揮統制を守る方法を見つけることも課題だ。ある程度の物理的な保護、そして拠点を広く分散させることが必要になるだろう」と述べた(他の参加者もこれに同意した)。別のアメリカ人は、ハイレベル(統合任務部隊レベル以上)の部隊の機動性はそれほど重要ではないかもしれないとしつつ、生存性が重要であることに同意し、主な拠点が損害を受けた場合に備えて、代替施設を1つか2つ持つことが望ましい、と述べた。
機会、課題、ニーズに関する前述の議論を踏まえ、本章では、これらのいくつかをより詳細に説明し、東京のNEXTアライアンス会議で議論された他の重要なテーマと検討事項を紹介する。
3.1日本における常設統合司令部(PJHQ)
NEXTアライアンス会議で議論された包括的なテーマの一つは、限られた人数の緊密な人間関係に大きく依存する日米同盟の C2 プロセスから脱却し、元から知り合いでなくても参加者同士が互いを信頼できる、制度に基づく強固なプロセスを開発する必要性であった。この点で重要な変数は、日本が常設統合司令部を設立する計画を発表したことである。
ある元自衛官は、現在自衛隊法で定められている、平時における自衛隊の全体的な指揮系統について説明した(図6参照)。陸上自衛隊には5つの方面隊と2018年に設立された陸上総体がある。彼は、陸上総体と方面隊の役割分担は、有事が起きる前に明確化する必要があるとした。海上自衛隊には、機能別に3つに分かれている自衛艦隊と5つの地方隊がある。自衛艦隊は、統合幕僚監部からの統合運用要件と、米海軍との二国間作戦要件のバランスを維持しなければならない。航空自衛隊は機能別に5つに分かれ、そのうちの一つである航空総隊の中に4つの方面隊がある。効果的な統合防空ミサイル防衛(IAMD)を実現するには、航空自衛隊は、弾道ミサイル防衛(BMD)担当の航空総隊司令官ならびに各航空方面隊の司令官の役割と責任を統合しなければならない。戦時指揮系統への移行は、防衛大臣による命令が下され、図5に示した武力行使承認のプロセスを経て初めて可能となる。
図 6:自衛隊の指揮系統[19]
その元自衛官はさらに、現在の統合運用態勢と、統合幕僚長、他の幕僚長、主要部隊、そして統合任務部隊の関係について説明した(図7参照)。図の左側(赤線)は運用体制を示し、右側(青線)は管理統制を示す。この体制は米軍と似ており、2006年に統合幕僚監部が設置されて以来、統合運用態勢は段階的に進化してきた。初の統合任務部隊は、2009年3月にBMD統合任務部隊として限定的かつ暫定的に編成された。東北地方上空で人工衛星の打ち上げ(長距離ミサイル発射実験)を計画していると発表した北朝鮮に対応するためであった[20]。航空総隊司令官が地上のパトリオット部隊、航空自衛隊のレーダー部隊、海上自衛隊のイージス艦の責任者となった。この「暫定的」な取り決めは、北朝鮮のミサイルの脅威が根強いため、何度も延長され、現在も有効である。
ブリーフィングを行ったある日本人は、「この体制では、政策的観点を提供する防衛省内部部局と軍事専門家の観点を提供する統合幕僚長が車の両輪となり、防衛大臣をバランスよくサポートしている。しかし、あらかじめ計画された作戦計画に基づく自衛隊の統合運用は、中央集権的な統制と中央集権的な遂行の一形態であると言える」と説明した。さらに、「平時からグレーゾーン、武力紛争に至るまで、全領域で統合運用を実施するには、中央集権的な統制と非中央集権的な遂行を追求すべきである。重要なのは権限の委譲だ」と補足した。あるアメリカ人は、米側はある程度、非中央集権的な統制と非中央集権的な遂行で行動するだろうと答えた。
図7:自衛隊の運用体制及び統幕長と陸・海・空幕長の役割[21]
こういった状況の中、2022年末に国家防衛戦略が閣議決定された。そこには、「統合運用の実効性を強化するため、既存組織の見直しにより、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行い得る常設の統合司令部を創設する」という記述がある[22]。NEXTアライアンス会議の参加者らは、常設統合司令部を推し進める背景には、統合性の強化以外の理由もあると述べた。たとえば、統合幕僚長が政治指導部への助言と防衛大臣命令の実行の監督を兼務しなくてすむよう責任を合理化し(そうすれば統合幕僚長の米国のカウンターパートの数も減る)、その過程で米国との連合部隊や統合部隊において、常設統合司令官がより効果的なパートナーになれるようにすることである。常設統合司令部の立場は、一見すると、比較的単純なものに感じられる。ある日本人参加者の言葉を借りると、「下を見て」自衛隊がしっかり準備を行い、命令が作戦の観点から可能な限り効果的に実行されることを確認する。一方、統合幕僚長は、「上を見て」これらの命令に役立つ政策・軍事的助言を提供し、政治指導部を支援する(図8参照)。しかし、実際には、未解決の複雑で細かい問題も多い。
図8:自衛隊の指揮系統の予想図[23]
例えば、NEXTアライアンス会議の参加者らは、内閣官房(官邸)、国家安全保障局、防衛省内部部局の政治的リーダーや高官が皆、直接常設統合司令部に情報を求め、指示を出すだろう、と自らの経験に基づいて述べた。こうなると、常設統合司令部の「下を見る」任務も複雑になってくる。同様に、武力行使を「必要最小限度」に抑え、交戦規則を洗練させ、政治指導者への助言をサポートするため、統合幕僚監部も常設統合司令部に頼る可能性が高い。統合幕僚監部は、諜報分析、後方支援、戦略的コミュニケーションなど、自衛隊全体の活動に対する包括的な責任も保持する可能性がある。加えて、各幕僚長が常設統合司令部に戦力を提供する可能性もあるが、それがどのように機能するか(特に、四つ星の各幕僚長と比較して、常設統合司令官が三つ星のリーダーである場合)についても考える必要がある。
ある日本人参加者は、自衛隊全体の規模が拡大していないため、常設統合司令部は、すでに人員不足に陥っている他の幕僚監部や方面隊からスタッフを引き抜く必要があると指摘した。統合幕僚監部はすでに、認可された水準から約8%低い人員不足に陥っており、自衛隊全体では、2021年度末には6.6%の人員不足に陥った[24]。自衛隊の2022年度の採用人数は目標を半分以上下回ったため、状況は改善されていない[25]。
東京で開催されたNEXTアライアンス会議の時点では、常設統合司令部の最終的な規模、範囲、場所は発表されていなかったが、防衛省が来年度の予算編成を始める2023年の夏か秋までには、こうした疑問点のいくつかに答えが出るだろう。統合幕僚監部と常設統合司令部の役割と責任をどのように分担するか、人員をどのように配分するか、といった詳細は日本が決めることである。しかし、これらの決断には米国と日米同盟の利益が複雑に絡んでいるため、米国の政策立案者は、こうした詳細について日本側と話し合う適切な時期や方法を模索している。常設統合司令部が完全に立ち上がるまで待つよりも、計画の初期段階で日米を連結させる何らかの方法を「設計に導入」する方がはるかに簡単だろう。ある米軍将校は、「日本が計画している大まかな構造をまず見てから、二国間の緊密な協力を始めることができる」と指摘した。常設統合司令部がどの戦域や地理的範囲を管轄するのかという点についても、まだ答えが出ていない。ある米国の参加者は、南シナ海やフィリピンは含まれるのか、と疑問を呈した。
常設統合司令部の役割と責任については、日本人参加者の何人かが、様々な段階やシナリオについて想定し、下記のように説明した。
平時において想定される常設統合司令部の役割:
グレーゾーン事態における役割:
武力攻撃事態:
別の日本人参加者は、常に進化する脅威に対する作戦構想を策定しながら常設統合司令部を設立し、新たな反撃能力を十分に活用した統合防空ミサイル防衛の指揮系統を確立することが、自衛隊にとっての重要な課題の一つであると述べた。また、自衛隊の指揮・統制・通信・コンピュータ(C4)と情報・監視・偵察(ISR)のネットワークは、全軍種にわたる相互運用性と、米国の同ネットワークとの十分な相互運用性を確保するように統合されなければならない、と補足した。24時間年中無休で機能を維持するための冗長性の他、キネティックな攻撃とサイバー攻撃を含むノンキネティックな混乱に対する強靭性も備えなければならない。これらは野心的だが重要な目標である。
ほとんどの参加者は、日本政府が最初から「完全に成長した」、あるいは完全に権限委譲された常設統合司令部を創設するよう努めるべきだと提言した。常設統合司令部の成功の可能性を最大化するにはそれが最善の方法だと参加者らは述べた。しかし、日本の政策立案者が「小さく始める」アプローチを取り、時間をかけて常設統合司令部を段階的に構築するのではないかと危惧する声もあった。ある元米軍将校は、こうした状況を避けるため、常設統合司令部が自らの統合任務部隊のニーズを事前に予測し、計画と準備の段階で政策立案者を「巻き込む」ことができると述べた。
常設統合司令部の理想的な場所については、参加者の意見が分かれた。政治的意思決定の中心に近い場所(つまり市ヶ谷の統合幕僚監部や防衛省と同じ場所)に置くべきだという意見もあった。ある日本人参加者は、「首相も一部の行動、タイミング、標的を承認したいと考えるようになるだろう」と述べた。市ヶ谷に拠点を置くことは、漸進的に常設統合司令部を構築するアプローチに適している。統合幕僚長としても、統合幕僚監部と常設統合司令部の間の役割と責任の分担を見極めることができ、意見の相違があれば素早く解決することができる。
しかし、市ヶ谷に配置されれば、常設統合司令部は影が薄くなって弱体化し、その権限と運用の有効性も阻害されかねないという意見もあった。また、常設統合司令部を紛争が最も発生しやすい(すなわち任務が遂行される)場所に近づけることの利点を強調する者もいれば、逆に敵の攻撃に対する脆弱性を懸念する者もいた。ほとんどの参加者は、米国のC2に「接続」または「追加」する能力を常設統合司令部に持たせるか、日米間のC2を調整できる事務所を常設統合司令部と同じ場所に置くべきである、とした。
ある日本人参加者は、常設統合司令部を「インド太平洋軍の作戦上のカウンターパートとなり、部分的には戦略的カウンターパートにもなる」とし、インド太平洋軍の主要な「戦略的カウンターパート」は統合幕僚監部のままかもしれないと述べた(図9参照)。ほとんどの参加者は、平時に関してこの意見に同意したが、実際どのような関係となるかの詳細については、多くの議論があった。一部の人は、常設統合司令部が日本防衛や地域安全保障のための統合軍のような役割を果たすものの、日本や地域の重大な軍事的危機が発生した場合には、インド太平洋軍がほぼ確実に統合任務部隊を指定し、個別の戦域や任務を担当させるだろう、とした。ある米軍将校は、「日米間の真のギャップは統合任務部隊レベルにある」と述べた。日本に焦点を当てた米軍の統合任務部隊に対し、常設統合司令部が適切なカウンターパートになるだろう、と彼は提案した。
図9:常設統合司令部と米軍の関係の予想図[26]
インド太平洋軍が近い将来、戦力を持つ何らかの統合部隊司令部をこの地域に設置する可能性もある。2023年度国防授権法は、同軍にそれを2024年10月までに行うよう指示している[27]。このアプローチには前例があり、太平洋艦隊の第519統合任務部隊は、2013年に廃止されるまで約10年間、この地域の有事に重点を置いて活動した[28]。ある元米軍将校は、統合部隊司令部がインド太平洋軍や上位の統合任務部隊に接続される、O-6レベル以下の「戦闘クラブ」のようなものだと説明した。「司令官がいないため、常設統合司令部とは大きく異なる」とし、指揮系統によって、太平洋艦隊司令官やインド太平洋陸軍司令官の下に導入されるかもしれないとしている。第519統合任務部隊は常設分散型で、150人の要員を中核とし、(指揮艦の寝台数によって)400人まで拡大することができた[29]。同部隊の司令官は太平洋艦隊司令官であった。2011年には、その一部が在日米軍をサポートし、トモダチ作戦の統合支援部隊として活動した。
この地域における危機が一つの小さな紛争に留まらず、複数の戦域や任務を巻き込んだ大きなものになれば、日本がインド太平洋軍の活動の一部に参加する可能性は高い。また、インド太平洋軍が2つか3つ、あるいはそれ以上の統合任務部隊を創設し、ハワイの同軍司令部、あるいはハワイかグアムにおける新しい統合部隊司令部の指揮によって、戦闘を管理する可能性もある。この場合、常設統合司令部のカウンターパートはほぼ確実に、インド太平洋軍の「日本統合任務部隊(JTF-Japan)」となる(インド太平洋軍そのものではない)。この二国間部隊は、日本の防衛に対する米国の支援と、地域の安全保障に向けたインド太平洋軍の活動に対する日本の(国会承認済みの)貢献の両方を計画・監督することができる。こういった選択肢について、本要約の第4章で詳述する。
3.2「日本防衛」対「地域有事」
NEXTアライアンス会議の参加者が頻繁に議論したトピックの一つは、日米両国の軍事アセットの意思決定と適用をより緊密に統合することで恩恵を受けるさまざまなシナリオに合わせ、日米同盟のC2をどのように近代化させるかという点であった。法的・政治的な理由から、日本が米軍と連携できるのは地域有事、つまり日米安全保障条約第4条でいう「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたとき」に限られる。しかし、日本防衛事態、すなわち第5条でいう「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方(つまり日本または米軍)に対する武力攻撃」が発生した場合の制限ははるかに少ない。この場合、同条約を通じて、各国は「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」ことを約束している。
第2章の第2節で紹介したように、自衛隊が武力行使できるのは、二つの状況のいずれかのみであり、国会の承認も必要である。すなわち、1)日本に対する「武力攻撃事態」、または2)日本と密接な関係にある国に対する攻撃であり、日本にとって「存立危機事態」に該当する地域の有事、である[30]。いずれの場合にも、状況によって、展開の柔軟性や交戦規則に関して比較的厳しい制限があるが、自衛隊は全面的に参加することになる[31]。このような事態であれば、日米両国は、より統合され近代化されたC2の枠組みをフルに活用することになる。
別途、日本への直接的な脅威は比較的少ないものの、米国が「日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態」に関与している第三の状況においても、ある程度日米の軍事的統合が許されている。これを可能にする法律は、「日米安全保障条約の目的の達成に寄与する」米国の活動に対する支援、つまり第4条の事態を対象としている[32]。これは何らかのグレーゾーン事態や限定的な紛争(例えば米国と北朝鮮、東シナ海における米国と中国の紛争など)に適応できる可能性がある。その場合、日本の関与は、後方支援活動、捜索救助活動、船舶検査活動や、日本の安全保障に関連する「その他の措置」に限定されるだろう[33]。また、日本の支援は、戦闘地域や危険な状況を避ける必要があり、米軍の武力行使と一体化するような支援は避けるべきである(日本政府は、「現に戦闘行為を行っている現場」で支援を行わないことでその意図が示されると考えている)[34]。
また、「第95条の2」の任務のように、平時に日米同盟が行うことができる共同軍事活動もある[35]。これは、日本の防衛に資する活動に従事している米軍の武器やその他の装備を自衛隊員が警護することを認める自衛隊法の条文を指す(「アセット防護」任務とも呼ばれる)。第95条の2が運用できる米国の活動の例としては、ISRの任務(弾道ミサイルの警戒のためのISRを含む)、「重要影響事態」に際する輸送・補給、日本を防衛する能力を向上する二国間・多国間訓練などがある。2021年に自衛隊はISR活動中に4回、共同訓練で17回、米軍アセットの警護に貢献した[36]。NEXTアライアンス会議に参加した米軍将校によれば、2022年には27回の警護に増加した。
アセット防護の任務は、日米同盟のC2の例として興味深い。まず、2017年頃までは許可されていなかったため、比較的最近の活動である。また、一方が望む結果を表明することから二国間のやり取りが始まり、現実的かつ政治的に可能な計画を追加し、その後きちんと調整を行って遂行するという良い例である。アセット防護の任務は、政府間で緊密に調整される。十分な準備期間があるこのような任務では比較的うまくいくやり方だが、戦時中の統合任務については、この種のプロセスが適切でないことは明らかであろう。また、日本国内で、あるいは連絡官という形で同じ場所で働くことを可能にすれば、プロセスを迅速化し、成功率を高められることも明確だ。
現在の日米同盟において最も洗練され、合理化された連携はミサイル防衛であろう。米国は1990年代後半から日本に早期警戒情報を共有している。両国は、ミサイル防衛レーダーシステム(TPY-2レーダー)や日米のイージス・システム搭載護衛艦などのアセットによって収集された情報も互いに共有している[37]。この任務の特徴は、高いレベルの相互運用性、頻繁な二国間訓練、そして(BMD統合任務部隊を擁する)日本側の強固な統合性である。しかし、ここでも、日米の権限委譲の仕方に隔たりがある。NEXTアライアンス会議に参加したある米政府関係者は、米国はミサイルの撃墜権限を大尉(O-3)レベルに委譲することが多いが、日本では首相が関与することもあると述べた。
また、緊密であればあるほど、相手に対する期待も大きくなることが多い。日米同盟におけるミサイル防衛協力が過去に摩擦を生んだこともある点は留意すべきだ。NEXTアライアンス会議に参加したある元自衛官は、「北朝鮮のミサイルに対する日米の共同監視は、米政府にとって政治的に厄介な場合があると、クリントン政権時代から言われてきた。こういった日米協力に関する具体的な取り決めがないため、日米それぞれが国別の任務に基づいて部隊を運用してきた。その結果、北朝鮮のミサイル発射に対する危機感が日米の間で異なることがある。また、例えば南シナ海の情勢が緊迫化した際には、何を優先付けるかで意見の違いが生じた。そのため、両国はBMDアセットをどう配分するかに関して不安を覚えた」と振り返る。
両国の軍事活動において、日本の参加は「スライディング・スケール制」といえるだろう。NEXTアライアンス会議の参加者らは、近代化された日米同盟のC2がさまざまな形の参加に柔軟に対応しなければならないだろう、とした。図10にさまざまな状況下で許容される自衛隊の役割と任務を要約したが、当然のことながら、日本への直接的な脅威がより深刻になるにつれ、役割や任務が大幅に拡大する。日本防衛(または武力攻撃)事態では、日米の軍事活動に対する制限が比較的少ないが、より広範な地域の有事では、制限がかなり多い。ISR、ミサイル防衛、後方支援のみならず、アセット防護においても、日米の統合軍事活動の頻度が高まっている。日米同盟のC2や二国間の計画能力が強化されれば、こういった活動は直ちに恩恵を受けるだろう。より危険で破壊的な日米同盟の活動は、相当特殊で深刻な状況にしか発生しない。それでも、こうしたシナリオに備え、より緊密に結びついたC2構造に移行できるようにしておく必要がある。
日本のある元自衛官は、地域の有事に関して、この最後の点を強調した。日本から見れば、「重要影響事態」として始まった有事が「存立危機事態」、さらには「武力攻撃事態」へと移行することも十分考えられる。その意味で、「日本防衛」は地域の有事と密接に関係しうるため、日米同盟はこれを事前に検討し、日米間の連携やC2の移行について共通認識を持つ必要がある。「日本防衛は独立した問題ではないため、日米がバラバラに行動することはできない」と彼は述べた。
ある米軍将校はこれに同意し、米軍が日本統合任務部隊を創設した場合、インド太平洋軍の取り組みを支援することが目的になるだろう、と述べた。地域の有事においては、「重要影響事態」や「存立危機事態」に対処する日本と調整し、支援することが取り組みの一つとなるかもしれない。他方、より広範な紛争においては、インド太平洋軍の任務の一つとして、日本防衛を支援する米国の取り組みを調整するかもしれない。米国としては、日本防衛に向けた活動を他のインド太平洋軍の活動と整合させることで、敵対国に最大の打撃をもたらし、両国で日米に対する脅威を軽減することを目指すだろう。
図10:様々な状況下で許される自衛隊の役割と任務の概要[38]
※2015年の「日米防衛協力のための指針」によれば、日米同盟の平時の安全保障調整には、ISR、防空・ミサイル防衛、海上安全保障、アセット防護、訓練・演習、後方支援が含まれる(すべて国内法および文民政治的意思決定に基づき、国家の任務として遂行される)。
有事において、敵対国が日本を直接攻撃し、そこから範囲を広げていくという間違いを犯す可能性は高いと言える。しかし、ある元米政府関係者は、そうとも限らないことを念頭に置くべきだとし、「地域の危機へのリアルタイムの対応に、日米で大きな違いが生じる可能性もある。日米間の政治的対立や誤解を避けるため、我々が考案するC2構造は、それに対処できるだけの柔軟性と緊密性を持つ必要がある」と述べた。さらに、ある日本政府関係者は、日本国民に情報を提供し、地域有事への支援をめぐる日本政府の考えに「キャッチアップ」してもらう必要があると指摘した。彼は、日本政府が「日本の防衛と米国の地域活動への支援に関し、資源をどのように配分するかという難しい問題に直面するだろう」と述べ、国民の支持が必要だとした。
ある元米軍将校は、このトピックに関する重要な疑問点の一つとして、常設統合司令部の主な任務が何なのかを考える必要があるとし、「日本の防衛は、より広範な責任を複数持つインド太平洋軍の主要任務ではない」と述べた。他の参加者もこれに同意し、日米は新しいC2の枠組みの中で任務を慎重に調整し、C2の緊密なパートナーと似た任務となるようにすべきだ、とした。「軍はその任務、機能、業務によって形作られ、業務はしばしば複数の統合任務部隊の間で分担される」とその元米軍将校は述べた。これらの任務、機能、業務によって、「人材を配置し、訓練し、装備する」という軍隊の責任が形成される。日本の統合幕僚監部は、おそらく「人材配置、訓練、装備」の役割を(各軍種とともに)維持するだろう。また、(「任務、機能、業務」に関連する)常設統合司令部の責任によっては、インド太平洋軍の一部や、日本に拠点を置くかもしれない米軍の新しい統合任務部隊と似た任務を得る可能性がある。その他の常設統合司令部の任務は、パートナー機関とは異なるものになるだろう。
これに関連して、戦闘空間の問題もある。米軍と自衛隊はどこで活動することになるのか。2015年の「日米防衛協力のための指針」は、日本と日米同盟を危険にさらす事態に対処するための地理的範囲を定めることを明示的に控えている[39]。ある日本人参加者は、このことに言及しつつも、「日本の任務を効果的に遂行するためには、ある程度地理的な制限や指定領域が必要だ」とした。政治的にも、運用という意味でも、危機において自衛隊があまり遠くまで出動するのは難しいだろう。ある元米軍将校もこれに同意し、両国は戦闘空間の共有を避けるべきだと強調した。「別々の指揮官を持つ2つの部隊が同じ戦闘空間で戦うことはできない」と彼は言い、そうすることは友軍の誤射事故や武器システムの弱体化といった間違いを招くリスクがあると主張した。日米両国は過去に災害救援活動(例えば、2013年末の超大型台風ハイエン(台風第30号)への対応)でこのようなことを行い、司令船間で将校を交換したこともあった。しかし、多くの参加者は、戦闘での状況は異なるだろう、とした。
3.3情報共有とサイバーセキュリティ
NEXTアライアンス会議の参加者らは、C2の近代化がどのようなものであるにせよ、状況把握の密な共有が必要であることを頻繁に強調した。第2章の第1節で述べたように、トモダチ作戦では、情報共有と、今後のステップを決定する際の優先事項とリスクに関する共通の見解の策定という点で、日米が成功した点と弱点の両方が明らかになった。NEXTアライアンス会議に参加したある米軍将校は、日米同盟としての対応を要する深刻な危機が発生した場合には、情報共有を両政府の最高レベルまで引き上げるべきだと提案した。彼は、日米同盟のC2の近代化には、日米両国の軍人が米大統領と日本の首相(すなわち国家指揮権限(NCA))に合同でブリーフィングを行う機会を含めるべきである、とした。「インド太平洋軍司令官と日本の統合幕僚長による、両国の国防指導者、適切な場合には国家指揮権限への共同ブリーフィングを規定すべきだ」と彼は述べた。さもなければ、刻々と変わりゆく状況や様々な選択肢の意味合いに対するトップの指導者の理解が乖離する可能性があり、小さな差も大きな意味を持つからである。
NEXTアライアンス会議の参加者らは、近代化されたC2構造のイネーブラーとして、最高指導部間の全体的な戦略の情報共有に加え、日常的なISRに関する連絡、共同および二国間の相互運用可能な通信、情報セキュリティの慣行など、より低いレベルのやり取りについても議論した。米国の参加者らは、日本の統合性や情報セキュリティが最近向上していることを評価した。他方、詳細な計画を共有するにはまだ不十分だとする米側参加者もいた。ある米軍将校は、「我々は主にサイバーセキュリティと情報共有に制限されている。それが整備されていなければ必要な二国間調整ができない」と話した。
サイバーセキュリティをめぐる米国の懸念の一部は、日本に関する具体的な懸念以外に、日米同盟全体の脆弱性にも由来する。例えば、米政府関係者らは、中国が「米政府と民間企業のネットワークに対する、最も広範、活発、かつ持続的な脅威」ではないかと述べた[40]。この証言の直後、マイクロソフト、そして米国と「ファイブ・アイズ」参加国のサイバーセキュリティ機関は、グアムなどの場所における重要インフラ・ネットワークに中国国家が主導する団体「ボルト・タイフーン」によるスリーパー・マルウェアが侵入していることを発見し、警告を発した。米国やその同盟国がこの地域における危機に対応している最中に、その活動を混乱させることに使われる可能性があった、とのことである[41]。侵入の程度はまだ明らかではないが、この種の脅威に対する懸念から、米国防総省は、「ゼロトラスト」という戦略の下、データ保護に最大20億ドルを費やすことを決めた。各軍種も5年かけてさらに約20億ドルをこの分野に費やしている[42]。
ファイブ・アイズが発表したボルト・タイフーンの侵入に関する警告には、日本は含まれていない。警告が発表される数分前に、日本は「参考までに」簡単な通知を受け取っただけだそうだ[43]。このようなパートナーとしての能力の差を埋めるためにも、日本の2022年国家安全保障戦略では、サイバーセキュリティへの新たな投資と、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の大幅な再編を優先事項として挙げている。この再編の指針となる法案が現在議論されており、2024年までに国会に提出される可能性がある。一方、日本の防衛力整備計画はサイバーセキュリティに5年間で約75億ドルの予算を計上している。米国の投資を補完する資源は日本側にもあるはずだ。問題は脅威の規模と複雑さである。両国は、より多くの情報をより早い検知段階で共有できるよう、サイバーセキュリティに関する協力関係を強化する方法を探すべきである。サイバーセキュリティに関する日本の新しい法案の作成は、そういった模索をする良い機会である。
この点には両国とも関心があるようだ。日本の投資や改革がまだ不十分だという、具体性のない不満をただ繰り返す訳ではない。むしろ、両国で特定の情報共有の改善に取り組んでいるようだ。いくつかの分野で日本が十分進歩を遂げたら、米国が詳細な情報を共有する。「『勝利』がどのようなものかを日本に示す」ことで、他の分野における改革も引き出すことを目指している[44]。日本が新たな防衛力整備計画の一環としてサイバーセキュリティとC2への投資を拡大していることと相まって、この取り組みは、両国がさらなる進展を遂げる絶好の機会となるだろう。
情報共有を強化し、コミュニケーションを円滑にする方法の一つとして、お互いの司令部や部隊における連絡官(LNO)を増やすこともできる。ただ、両国はすでに比較的強固な連絡官プログラムを有している。NEXTアライアンス会議に参加したあるアメリカ人は、「連絡官プログラムは素晴らしいが、ここで必要なのは別のものだ」と述べた。彼は、ハワイにおけるインド太平洋陸軍(USARPAC)の副司令官がオーストラリア人であることを指摘し、相互運用性とコミュニケーションを向上させるために、「インド太平洋陸軍や太平洋艦隊の指導的地位に日本の幹部自衛官」を加えることを日米で検討してはどうかと提案した。しかし、別のアメリカ人参加者は、米軍が特定の機密情報に対して「NOFORN」(外国人には公開不可)指定を頻繁に使用しているため、人材交換で来た外国人将校が苦労することもあると指摘した。これは米国側の制限である場合もあるが、「他国の情報」が関与している場合もある。その国に明確に許可されていなければ、米国は別のパートナーと情報を共有できない。これを踏まえ、米国の参加者の一人は、地域有事に最も深く関わるトピックに焦点を当てた、多国間(米国以外では、特にオーストラリア、英国、日本、韓国)の情報共有の枠組みを作ることを提案した。人材交換プログラムの一環として日本の将校を米国に迎える案を追求するのであれば、後方支援の分野から始めるのがよいだろう。それなら、武力行使に関する日本の法的・政治的な問題を避け、情報共有のハードルも下げられる。
日米双方の参加者は、情報共有が極めて幅広いトピックであるとした。トップの指導者へのブリーフィングから「与那国島の射撃中隊に対し、キルチェーンの効率性を高める方法や、何に向けて撃っているのかが分かるように必要な情報を提供する」ような細かい内容に至るまで、あらゆることを含む。ある米国の参加者は、日米が直面する大きなハードルの一つが「米国の計画の非常に多くが統合世界情報通信システム(JWICS)に移行している」一方で、「C2構造がどうであれ」JWICSは同盟の文脈ではアクセス不可であることだとした。それでも、米軍の日本統合任務部隊の司令官を介して「インド太平洋軍と情報を統合させるための主要な窓口となり得る常設統合司令部は、このハードルを克服する鍵になり得る」と彼は述べた。
3.4「二国間」対「ミニラテラル」の連結
日米同盟が今後他のパートナー国と関与していくことをどの程度見込み、C2を設計すべきかという点も、NEXTアライアンス会議のさまざまな場面で議論されたテーマの一つであった。あるアメリカ人参加者は、「何らかの台湾危機を例に取るなら、それは(米国にとって)中国とのより広範な紛争に拡大するだろう。米国だけで中国とは戦えないだろうから、中国との戦いは連合軍の戦いになる。他国が参加しやすい設計はどんなものだろうか。その場限りの関与とならないように、そして我々の勢いが衰えないような形にすべきだ」と述べた。他の場でも同様の点が何度か言及された。アフガニスタンにおける国際治安支援部隊やイラクにおける米国主導の連合軍から有益な教訓が得られるのではないか、という意見もあった。
最後の点について、ある元米軍将校は、アフガニスタンやイラクは「全く異なる種類の戦争」であり、参考にならないだろうとした。彼は、「そこでのパートナー国との取り決めは但し書きや交戦規則だらけだったが、米国が完全な制空権を持ち、さまざまな重要な変数をコントロールできる状況であったため、それで十分だった。しかし、東アジアは異なる状況になるだろう」と述べた。彼は、米国だけではこの事態に対処できないことに同意しつつ、「『連合』というより、『合同』である必要がある」と述べ、米国と緊密な二国間パートナーシップを組んでいる同盟国を組み合わせた方が一つの大きな連合よりよいと説明した。これらの戦域で経験を積んだ別の元米軍将校は、何ができないかよりも、さまざまなパートナーに何が貢献できるかを考えるよう、参加者らに促した。彼は、イラクやアフガニスタンにおける他国の部隊は、米軍よりもはるかに厳しい交戦規則を持っていたにもかかわらず、いろいろな重要な任務に貢献した、と話した。
参加者らは、中国関連のシナリオと北朝鮮有事とでは状況が異なる可能性があることも指摘した。北朝鮮の場合、さまざまな同盟国やパートナー国の貢献を受け入れる多国間の枠組み、国連軍(UNC)がある。同軍は、国連が承認した多国間連合として北朝鮮と再び対峙する必要が生じた場合に備え、7つの「国連旗付き」の基地から成る後方司令部を残して、1957年に本部を日本から韓国に移した[45]。この協定には、米国、日本、オーストラリア、英国、カナダ、フィリピン、フランスなど、11カ国が加盟している。それでも、インド太平洋軍、在韓米軍、在日米軍、日本の常設統合司令部の間で起こりうるやり取りについては、考慮すべき重要な点が多い。
これとは別に、国連安全保障理事会決議2375と2397に基づいて講じられた、北朝鮮に対する国連制裁の実施を支援するため、2018年以降、複数の国が協力している。日本を拠点とする米軍艦「ブルーリッジ」を分析と通信のハブとし、北朝鮮による活動の監視と阻止を行っている。この「執行調整所」は、上記の国連制裁違反に関する情報を収集し、融合させている。データは米国、日本、フランス、韓国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国を含む連合の船舶、飛行機、その他の監視プラットフォームやメカニズムを通じて収集している[46]。中国に関しては同様のシステムがない。日本は2023年4月にオーストラリアと英国との円滑化協定を承認したが、これらは多国間協力を念頭に置いて設計されたものではない[47]。
NEXTアライアンス会議の参加者のほとんどは、日米同盟のC2が、一人の司令官が率いる統合部隊や連合部隊ではなく、二国間部隊として近代化されるだろうと予想した。現在の「日米防衛協力のための指針」はこれを反映し、「自衛隊及び米軍は、緊密に協力及び調整しつつ、各々の指揮系統を通じて行動する」と記述している[48]。日本の法制度と政治情勢も、この考えを支持している。ある元自衛官は、「米軍との統合運用を含む自衛隊の活動はすべて、日本独自の判断の下、憲法と国内法に従って行われる、というのが公式な立場である。つまり、日本政府は統一された部隊や作戦を望んでいない。しかし、日米がより緊密に連携し、軍事作戦で相乗効果を発揮しない限り、敵対勢力に対処できない可能性があることは、多くの人が認識している。C2構造に多少の隔たりがあっても、考え、計画、作戦を統一する必要がある」と述べた。
この元自衛官は、アルファベットの「Y」を構造の例として挙げた。日米それぞれの指導部を表す「Y」の字の左上と右上は、一つの行動となって下へ流れていく(軍の統一まではできなくても、努力を統一する)。会議の参加者の一部は、トップはもう少し緊密に統合されるべきだと述べた。しかし、ほぼすべての参加者が、一人の司令官と「統合されたスタッフ」(国籍や軍種に関係なく、各ポストに一人の将校のみが任命される)を擁する米韓式の連合軍司令部は日米同盟にそぐわないという意見で一致した。
「Y」の字のモデルを使って二国間部隊を構築することはできるかもしれない。だが、それを効果的にするためには、日米両国は「Y」の上端における意思決定と情報共有のプロセスを改善し、十分に類似した権限と能力を持つ二つの部隊を「Y」の下端まで誘導できるよう、接合点にC2のノードを作る必要がある。そのノードが上位にあればあるほど良いが、その下で日米の権限委譲のミスマッチがあればあまり意味がない(例えば、米軍は二国間部隊の決定に基づいて前進できるのに、自衛隊は何度も指揮系統を遡って様々な個別行動の承認を得なければならない、など)。米国は米軍の、日本は自衛隊の作戦統制権を保持することになるだろう。しかし、任務の内容や場所によっては、戦術的な統制が変わる可能性は否定できない、と参加者らは述べた。
以下の3つの基本的選択肢は、3日間にわたりNEXTアライアンス会議の参加者が出したさまざまなアイデアの要点をまとめたものである。日米両国が取れる選択肢はこれ以外にもある。また、NEXTアライアンス会議は具体的な提言を行おうとはしなかった。
4.1ビルディング・ブロック
日米両国にとっての選択肢の一つは、日米安全保障協力において過去10~20年間に見られた多くの改善を基盤とする、比較的単純で漸進的なアプローチである。機密軍事情報をより容易に共有することを目指し、両国が軍事情報包括保護協定を締結したのは、2007年になってからのことである[49]。二国間の計画と作戦調整のための同盟調整メカニズムや関連メカニズムが作られたのはつい2016年頃のことであり、二国間情報分析セルは設立後1年も経っていない。日米が共同で行うアセット防護任務は頻度と複雑さを増しているため、日米同盟の「筋力」はここ数年でより頻繁に鍛えられ、試されている。こうしたことはすべて、現在の活動を連結させ一貫性を持たせることで、日米同盟のC2プロセスを質的に向上させる機会を提供する。
この取り組みでは、日米の要員をより頻繁かつ持続的に共同配置することが必要であろう。NEXTアライアンス会議の参加者らは、日米の将校や関係者が集まって計画立案や作戦調整を行うことができる、横田基地や市ヶ谷の自衛隊本部の施設について説明した。これらは演習中に断続的に使用され、危機発生時にも使えるようになっている。日本が市ヶ谷、あるいは他の場所に常設統合司令部を設立する準備を進めている今、日米には、このようなスペースの一部を整備し、日ごろから使えるよう、両国の人員を配置する機会がある。例えば、日本の航空総隊が常設統合司令部の管轄下に入った場合、ミサイル防衛を担当する米軍要員を同司令部内に常駐させ、BMD活動の衝突回避のために定期的な話し合いを設けることもできる。攻撃に関連しない他の安全保障協力分野においても、近い将来、C2をより緊密な形で統合できるかもしれない。この点に関して、会議の参加者らは、特に後方支援と諜報・情報の共有を例に挙げた。例えば二国間情報分析セルは、近い将来、二国間の統合情報作戦センターへと拡大できるかもしれない。
もちろん、既存のフォーラムや枠組みの活用の仕方をこのように質的に変更することは、在日米軍内のみならず、在日米軍、インド太平洋軍、および関連する構成部隊の間でも、ある程度の人員配置や手続きの調整がなければ難しいだろう。在日米軍にさまざまな構成部隊から来た出向者を加え、米軍のマンパワーを強化することは可能かもしれない。さらに、一定の意思決定、計画、実行を両国が日本国内で行えるように、このような二国間または合同の部隊にある程度の権限委譲もできるだろう。
このような動きからは、必ずしも新たな形態の日米同盟は出てこないだろう。同盟調整メカニズムを例に取れば、それは「2つの別々のC2構造を橋渡しするフォーラムで、C2ではない」と指摘するNEXTアライアンス会議の参加者もいた。それでも、何人かの参加者は、同メカニズムの機能を向上させることを推奨した。例えば、参加する上位(局長・次官補級以上)の軍人や官僚の役割を明確にすること、より広範な政府関係者(警察、沿岸警備隊、重要インフラ関係者など)を常任メンバーとして参加させること、ハイレベルの政治的意思決定を促進する枠組みを整えるため、日本の閣僚レベルの政府代表に同メカニズムを担当させることなどが提案された。ある米国の参加者は、日本政府におけるパートナーや上級政策決定者を増やして同盟調整メカニズムを強化すれば、米国と韓国が毎年実施する4日間の危機管理訓練と同様の方法で活用できると提案した。
日米両国は、目先の優先事項に対処するため、C2の特定の部分を近代化するという、段階的な方法を取るかもしれない。それでも、長期的な目標と、短期的な措置がそれらの目標にどう貢献できるかを戦略的に考えることは有益である。言い換えれば、たとえ断片的なアプローチであったとしても、これらの断片が全体像の中でどのような位置づけにあるのか、またそのビルディング・ブロックが将来的に日米同盟のC2をどのように強化するのかについて、両国が共通の理解を持つことに意義がある。
その一環として、地域全体の危機を予期し、米国の構成部隊の一つ(おそらく太平洋艦隊)を統合任務部隊のリーダーとして事前に指定し、日米の主要なプレーヤーを先につなぐことが考えられる。これに関連して、ある元米軍将校は、どの構成部隊が選ばれようと、平時からその部隊に日米の人員を合同で配置する努力をすべきである、と提言した。そうすれば危機が起きた時にシームレスに対応し、適切な事務所と長期にわたる同盟関係を構築できる。逆に、日本の常設統合司令部に対する米国のカウンターパートが、(新たに「追加された」統合任務部隊ではなく)再構成され作戦能力が強化された在日米軍になる可能性が高ければ、在日米軍を少しずつ増強する方がよいかもしれない。
NEXTアライアンス会議では、ある元自衛官が、C2近代化について議論する際の重要な検討事項を示したマトリックスを作成し、他の参加者らに示した(図11参照)。その表の全体的なテーマは、日米同盟のC2における変更を、どの程度2015年の「日米防衛協力のための指針」に紐づけるかということであった。軍事作戦に直接関係する同盟調整メカニズムの共同運用調整所ならびに各自衛隊・米軍各軍間の調整所を日米同盟のC2に組み込むことができるか、あるいは組み込むべきなのかという疑問点を考えたとする。例えば、同メカニズムが政治的に重視され、軍事情報に基づく意思決定が閣僚レベル(両国の国家安全保障会議同士など)にまで上がれば、共同運用調整所や各自衛隊・米軍各軍間の調整所は切り離され、何らかの形で常設統合司令部や米国のカウンターパートと連結することになるかもしれない。常設統合司令部に任命された要員は、インド太平洋軍に派遣される連絡官になることもできる。また、その元自衛官は、「時間範囲」の側面について、台湾危機に対する抑止力を支えるためには、日米同盟の対応力の強化が鍵となるため、24時間年中無休の体制が重要であるとの見解を示した。
図11:日米同盟のC2近代化に際して検討すべき課題[50]
「検討すべき課題」の表は、これらの疑問点にどう対応すべきかを左右する、歴史的、法的、政治的な要素に触れている。日米同盟内の作戦調整はすでに比較的うまく機能しており、大規模な演習や柔軟抑止選択肢(FDO)などの設計では、「軍事面で(日米は)かなり迅速に計画を整理できている」とある米軍関係者が指摘する。「他方、実施の段階に入ると、政治的な調整に予想以上に時間がかかったり、必要な計画の規模を縮小せざるを得なくなったりする」と彼は補足する。このコメントは、日本に駐在する日米軍関係者の間ですでに緊密な意思疎通と調整が行われているというプラスの面があるものの、両国の政治と十分に結びついていない(あるいは政治に主導されていない)、という日米同盟の現状を反映している。参加者らは、これが戦時状況においては不十分だと述べた。米国の参加者の一人は、軍事演習中に政治的意思決定の行使を拡大することが当面の優先事項であるべきだと提案した。
「検討すべき課題」の表は、情報共有に特に言及しなかったが、ある米政府関係者は、情報、サイバー、ネットワークのセキュリティは、多数の重要なビルディング・ブロックのイネーブラーであるため、両国は早くこの面で進展すべきだと指摘した。「構造には時間をかけて取り組んでいくことになるだろう。しかし、サイバーセキュリティほど基本的なイネーブラーには、今すぐ取り組むべきだ」とその政府関係者は述べた。
ある米国の参加者は、技術に関して日米が現在行っている決断が、選択次第で日米同盟のC2近代化を促進することも複雑にすることもできるという事実を指摘した。彼は、日本が近い将来、サイバーセキュリティのアップグレードと、(センサーネットワークとC2のアップグレードを含む)反撃システムに関して決断しなければならないと話した。一方、米国は2022年3月に、「自動化、人工知能、予測分析、機械学習を用いて、戦闘空間全体の情報を『感知』し、『理解』し、『行動』する」新しい統合全領域指揮統制(JADC2)の実施計画を発表した。後者は今後数年にわたって展開される予定である[51]。両国は、このように進化する技術動向をリアルタイムで把握した上で、C2近代化に関する対話と行動を進めなければならない。
より緊密な統合というテーマの下、NEXTアライアンス会議に参加したある元米軍将校は、日米がもっと統合した形で沖縄の基地を共同使用すべきだと強く訴えた。「日本の水陸機動団(ARDB)は、米国の第31海兵遠征部隊(MEU)とキャンプ・シュワブで互いに学び合い、同じ装備を使うべきだ。また、那覇空港にいる航空自衛隊のパイロットは、嘉手納基地の米軍パイロットともっと緊密に協力し、ベストプラクティスを共有し、同じプロファイルを飛行すべきだ。沖縄以外の基地で日米が部隊を統合している姿こそ、日米同盟の未来だ。沖縄で分離されている状況は日米の過去であり、地元市民に見せるべきものではない」と彼は述べた。
日本における基地の防護は今後、日米同盟の調整において、これまでより頻繁に話し合われ、内容もより実質的になる可能性が高い。日本周辺における任務をどのように展開・遂行するかという点で、日米両軍がより統合されれば、基地の防護を含む任務の遂行・支援の方法について「歯(戦闘兵)から尻尾(軍関係者)まで」検討しなければならなくなるだろう。ある米国の参加者は、「日本の基地が攻撃され、アメリカ人が死亡した場合、基地を守るのは日本の責任だと言って片付ける訳にはいかない。その責任は両国が共有するものだ」と指摘した。
4.2日本統合任務部隊と連携する二国間幕僚幹部のアプローチ
日米同盟の安全保障協力を段階的に改善する「ビルディング・ブロック」方式を採用すれば、それだけで目標が達成できたと考えることができる。他方、二国間でより正式で強固なC2の関係を構築する上で、それが足がかりになる可能性もある。NEXTアライアンス会議の参加者の大半は、後者への支持を表明した。日米同盟のアセットを生産的に活用し、進化し続ける脅威に対処するには、より包括的な二国間体制が必要であるとの考えであった。本会議ではC2近代化に向けた具体案を検討しなかったが、議論の末、2つの体制案が浮上した。無数のバリエーションが考えられるが、主要な案を明確にするため、筆者は簡単な組織図を作成した(図12および13参照)。本章で取り上げる1つ目は、両国がさまざまな脅威に直面するシナリオやあらゆる領域で共に戦えるよう準備することに重点を置いた、二国間統合幕僚監部を日本に常設するものである。これには、米軍の新しい日本統合任務部隊(または「日本統合部隊(Joint Force Japan)」)の導入が伴う。日本統合任務部隊は、現在とほぼ変わらない在日米軍に付随したものになるか、再編成された在日米軍の不可欠な一部となるだろう。
図12:日本における二国間統合幕僚監部の予想図[52]
NEXTアライアンス会議の参加者らは概ね、新たな二国間統合幕僚監部には、米軍の統合任務部隊も付随すべきだと考えた。この日本統合任務部隊は、日本に常設され、何らかの形で在日米軍と連結したものとなる。専任の米軍将校をトップに置き、在日米軍にいる少人数のスタッフと、新しい二国間統合幕僚監部で働くチームがサポートすることになるだろう。二国間幕僚監部の日本側は、おそらく日本の常設統合司令部で働く人々が派遣されるだろう。この意味で、二国間統合幕僚監部は、日本の常設統合司令部と米国の日本統合任務部隊を同時に支援することを想定したものであり、同等の階級を持つそれぞれの国の代表が共同で率いることになるだろう。
二国間統合幕僚監部は、両国が情報共有、情報タスクの付与・分析、二国間計画、BMD作戦調整、後方支援調整、アセット防護任務調整、反撃調整などを行う主な場となる可能性がある。そういった機能は定期的な二国間演習を通じて試され、強化されるであろう。ある米軍将校は、紛争時における重要な機能の一つは、米国の作戦計画と、日本の(国会による承認に向けて準備されている)基本行動計画の適合性を最大限に高めることだと述べた。情報共有については、インド太平洋軍が最近改善させた、「任務パートナー環境」を構築することも考えられる[53]。
二国間統合幕僚監部は、おそらくどんな部隊も持たないだろうし、何かを指揮することもないだろう。そのような権限は、自衛隊については常設統合司令部に、米軍については日本統合任務部隊(在日米軍)とインド太平洋軍に残る可能性が高い。常設統合司令部と日本統合任務部隊の間の作戦統制調整が、お互いをよく知る人員によって一箇所で行われるようにするため、インド太平洋軍が必要に応じて米軍の一部を日本統合任務部隊に割り当てることは考えられる。これは、予期せぬ何らかの事件が現地で発生し、日本で調達できるものを使って在日米軍が迅速に対応する必要が生じた場合に有効である(つまり、先に述べた「日米同盟の対応力強化」の一環である)。危機が長引き、日本統合任務部隊を増強する必要があった場合にも、当初中核を務めたチームのほとんどをそのまま維持できる。トモダチ作戦のときのように、日米同盟の調整を国外から来るまったく新しいチームに「引き継ぐ」必要がないのだ。
二国間統合幕僚監部を創設した場合、同盟調整メカニズムがどうなるかは分からない。共同運用調整所と各自衛隊・米軍各軍間の調整所の機能は、新しい二国間統合幕僚監部の中に移設することができる。他方、同盟調整メカニズムは、日米地位協定に関連する問題を扱う「合同委員会」と、防衛協力に関する他の幅広い問題の政策調整を行う「同盟調整グループ」の組み合わせとして存続させることができると思われる。同盟調整グループと二国間統合幕僚監部は、先に述べた政治的意思決定の課題の多くに対処するため、緊密に連携するだろう。しかし、同盟調整グループが二国間統合幕僚監部の計画や部隊の移動案を正式に「承認」できるかは分からない。同グループは、作戦の境界を明確にし、日米の安全保障協力を最大限に活用するための政治的ハードルをクリアすることにも役立つかもしれない、有用なツールとなるだろう。だが、計画、演習、兵力移動を承認する権限は、おそらく従来どおり、各国の手に委ねられることになるだろう。
日本の防衛大臣と外務大臣、米国の国防長官と国務長官が集う日米安全保障協議委員会(「2+2」)はこのシナリオでも機能し続け、二国間統合幕僚監部のはるか上位に位置するだろう。それが図12に含まれていないのは、各国の指揮当局が意思決定を行うためのプロセスであり、そこから日本の防衛大臣と米国の国防長官がそれぞれの指揮系統を通じて命令を下すからである。このように、日米同盟を管理するプロセスはほぼ従来のままで、二国間幕僚監部という強力な新しいツールが加わることになる。
未解決の点の一つは、常設統合司令官とインド太平洋軍司令官の関係である。両者ともこの地域で任務を遂行する部隊の作戦上のリーダーであるため、緊密な関係が望ましいのは明らかである。日本統合任務部隊司令官は、インド太平洋軍司令官を代表して日本での作戦を率いるトップとなり、原則として常設統合司令部とインド太平洋軍の間の日常的なやりとりをすべて管理することになる。同時に、常設統合司令官がインド太平洋軍司令官と戦略的な協議を直接行うこともあるであろう。そこに日本の統合幕僚長が加わることもあるだろう。日本統合任務部隊がどのように設立されるかによっては、「インド太平洋軍の前方部隊」のような存在となり、常設統合司令部とインド太平洋軍のつながりを一層明確にすることも可能だ。ある日本人参加者は、米軍の日本統合任務部隊を、日本を拠点とする「北東アジア統合任務部隊」(つまり在韓米軍も包含するもの)として、より野心的に構想することができないかと提案したが、他の参加者らはこのアイデアをそれ以上追求しなかった。
日本統合任務部隊の司令官の階級はどうあるべきか、また、重大な危機の際により高位の将校を就けて同部隊を強化すべきかどうかも、考慮すべき点である。例えば、平時における日本統合任務部隊の司令官の仕事量と責任を考えると、1つ星か2つ星レベルのリーダーが適切で、O-6レベルのリーダーが二国間幕僚監部に出向することが考えられる。しかし、安全保障上の重大な危機が発生した場合、日米両国は、トモダチ作戦の時と同様の方法で体制のレベルを引き上げることができるだろう。この場合、日本統合任務部隊の司令官が二国間幕僚監部に移って米側を指揮し、新たに指名された統合任務部隊の司令官がハワイから日本に移動する可能性がある。後者は3つ星または4つ星の将校がよいだろうが、トモダチ作戦のように、(当時米軍の第519統合任務部隊の一部とともに統合支援部隊を指揮した)太平洋艦隊司令官でもよいかもしれない。こうすれば、米軍の日本統合任務部隊はより権威のあるものとなり、二国間幕僚監部の枠組みに「入り込む」ことができ、より迅速かつ完全に、日本を拠点とする米軍アセットと共に活動できるだろう。別の可能性として、在日米軍の作戦能力を強化し、インド太平洋軍の下、在日米軍司令官を日本におけるすべての米軍活動の指揮官として指名することもできる。
4.3日本統合任務部隊と連携する二国間部隊のアプローチ
日米同盟のC2をより高度な形で近代化するには、二国間統合任務部隊を日本に常設することが考えられる。同部隊は、高度な統合性と相互運用性が必要な防衛任務の遂行に、より直接関与することになるだろう。その指揮機能は、先に述べた二国間幕僚監部における調整機能とよく似たものになる。だが、二国間統合任務部隊は、単に行動計画を伝えたり調整したりするのではなく、米国や日本の部隊を持つ可能性がある。二国間部隊であるため、統合任務部隊の指揮官は一人ではないだろう。米軍と自衛隊の指揮官がそれぞれいて、日米同盟が関わるあらゆる段階の状況において緊密に連携することになる。
図13:日本における二国間(任務)部隊の予想図[54]
NEXTアライアンス会議に参加した複数の人が、情報共有や後方支援、そして反撃やミサイル防衛のような一刻を争う任務を統合できるため、このような体制の方が良い、と述べた。米国の参加者の一人は、二国間部隊の下で行動を統一するには、日米がどのように任務を分担するかが重要であると述べた。米軍と自衛隊にどれほど適合性と相互運用性があるかも重要な要素であり、これはある程度、両軍の互換性で測ることができる。互換性は、同じ装備や弾薬の使用を指すこともあるが、部隊やプラットフォーム全体に及ぶ場合もある。例えば、米軍の駆逐艦と日本の駆逐艦のどちらも特定の二国間任務を支援することができ、互いに交換することもできる、というようなことである。この文脈で言えば、米軍と自衛隊に「適合性」または「互換性」があるということは、単なる「衝突回避」と完全な「統合」の間であることを意味する。もし日米が特定の任務における真の互換性を達成できれば、二国間部隊の構造の下、統一された行動が可能になる。
ある米国の参加者は、米軍と自衛隊が大規模な二国間演習を行ったときの経験を振り返り、その一環で試験的に共同活動を行い、二国間統合運用センターを設立したと述べた。そこでは、機能別に二国間チームを編成し、指揮官に対して両国合同のブリーフィングを頻繁に行った(例えば、アップデートを一日一回、将来の作戦決定に関するブリーフを一日一回、将来の計画に関する話し合いを夕方に行うなど)。しかし、事後評価では、演習の参加者らは概ね、この体制が非現実的だとした。両国の主要な地上部隊(すなわち軍団と地域陸軍)が物理的にこれほど緊密に連携して戦うことはまれである。「もっと分散して戦えるようにする必要がある」とのことであった。
二国間統合任務部隊のシナリオにおける同盟調整メカニズムの役割は、二国間幕僚監部の場合と似ているかもしれないが、一つ大きな違いがある。同盟調整メカニズムは、日米地位協定やその他の兵力管理事項への対応に加え、二国間統合任務部隊の行動権限に関して、ハイレベルの政治的意思決定を円滑にする必要があるだろう。軍事命令は、二国間で協議したり、日米で調整された防衛命令を各国の指揮系統を通じて発令したりなど、従来どおりの方法で決定・実施されるだろう。しかし、危機発生時には、標的の選定や部隊の移動に関し、政治レベルでの監視や情報請求が激しくなるだろう、とNEXTアライアンス会議の参加者らは指摘した。十分な調整と、原則共同の意思決定をトップレベルで要する二国間統合任務部隊の行動には、必要に応じて二国間統合任務部隊と直接対話できる、十分な政治的権限を持つ二国間フォーラムが重要となる。法律や従来の伝統的な指揮系統は回避するものではないが、その目的は、二国間の行動のための意思決定ループを強化し、各国内のプロセスを補完することにある。
理論上、危機発生時には、同盟調整メカニズムを両国政府の国家安全保障会議同士のレベルにまで昇格させることができるが、その具体的なプロセスはこれまできちんと開発されてこなかった。2011年のトモダチ作戦の時にもし同盟調整メカニズムが存在していれば、おそらく国家安全保障会議レベルで発動され、福島原発事故による放射性降下物に関する困難な決断を調整しただろう。実際には、二国間協議というアドホックな方法がとられた。在日米国大使館は、あの危機的状況において重要な役割を果たした。国家安全保障会議主導の同盟調整メカニズムにおいても、米国大使館が重要な役割を果たすことは間違いないだろうが、軍事的な問題に関わる場合は、ホワイトハウスと官邸ができる限り緊密に連携する必要があるだろう。そのような状況で、課題全体に対する日米の政策アプローチを策定する権威を持ち、審議を行って同盟を管理する場となるのは、依然日米安全保障協議委員会(「2+2」)であろう。他方、国家安全保障会議が主導しつつ、外務省、防衛省および軍部の代表を依然含む同盟調整メカニズムは、その政策アプローチの対象となる軍部に対して決定を下し、ガイダンスを提供できるだろう。
最近日米両国は、C2体制の近代化と、より緊密な統合に力を入れている。後者は、1)政治と軍、2)軍と軍、3)文民と軍、という主に3つの側面で追求され、真に政府全体の統合を目指す。東京で行われたNEXTアライアンス会議の対話では、これらの重要性が再確認された。また、この課題の複雑さ、選択肢の多様性、両国による調整の必要性も強調された。明白な解決策はないが、会議参加者らは、日本に拠点を置き、常時スタッフがいる、より強固な二国間調整事務所や何らかの部隊の設立に強く賛同した。これは、平時から紛争時まで、日本の新しい常設統合司令部とインド太平洋軍を直接つなぐことになる。日米双方がこの課題の重要性を認識し、相互の合意に基づく計画でC2近代化に向けて努力する政治的意志が両政府にあるようなのはよいことだ。
また、日米両国が直面する、刻々と変わるリスクを考慮し、日米同盟の調整をできるだけ早く決定・実施すべきであるという点でも、会議参加者らは概ね合意した。ほとんどの参加者は、最終的なC2の姿に関する完全な合意を待たずに、短期的に「ビルディング・ブロック」や「C2イネーブラー」を強化するアプローチを追求することを支持した。将来のC2体制にとって価値があることが既に分かっている、同盟を調整する要素を改善する、というものである。加えて、会議に参加したある元日本政府関係者は、C2近代化の目標や方法に関して日米が決定する際、特定のステップに優先順位をつけることが重要であると提言した。そうすれば、合意されたタイムテーブルに従い、主要なマイルストーンの達成度を測定できる。「簡単なことから先にやるべきではない。タイムラインと実施計画を策定し、それを遵守すべきである」と彼は述べた。
2023年の残り期間と2024年の最初の3ヶ月間、「新たな挑戦に向けた指揮統制関係に関する日米タスクフォース」は、3つの主な選択肢をより詳細に議論し、新たな選択肢も検討するため、さらに数回の円卓会議をハイブリッドで開催する予定である。特に、2023年3月にNEXTアライアンス会議で言及されたものの、十分議論する時間がなかった2つの分野に着目したい。すなわち、日米のC2 近代化が在韓米軍や北朝鮮の有事とどのように関連するか、そして核兵器が関与する状況での意思決定や衝突回避にどう影響するか、ということである。また、このタスクフォースは、多様な専門家やステークホルダーを新たに対話に巻き込み、参加者を増やす予定である。この作業は、2023年10月にメリーランド州アナポリスで開催される、2回目の二国間NEXTアライアンス会議(トラック1.5)が中心となる。その後、ワシントンDCで公開イベントが開催され、2024年3月末までに最終報告書を作成する予定である。
本要約は、タスクフォースの合意文書ではなく、参加した専門家およびその組織の意見や立場を代表するものでもありません。本要約は、2023年春の NEXTアライアンス会議、その前に行われたインタビューや円卓会議、およびその後NEXTアライアンス会議参加者と行われたフォローアップに基づき、ジム・ショフが作成したものです。内容については、著者が全責任を負います。本要約に関するご質問やご意見は、ジム・ショフ(jschoff@spfusa.org)までお寄せください。この概要は岡崎詩織さん(Shiori Communications, LLC)による翻訳されました。
[1] Yuki Tatsumi, “Great Eastern Japan Earthquake: ‘Lessons Learned’ for Japanese Defense Policy,” Stimson Center, November 2021, p. 17. https://www.stimson.org/wp-content/files/file-attachments/Yuki_1_1.pdf
[2] 同上、p. 19。
[3] NEXTアライアンス会議に参加したアメリカ大使館職員による説明 (2023年3月11日)。
[4] US Forces Japan website, About USFJ/Our Mission, https://www.usfj.mil/About-USFJ/ accessed by the author on April 10, 2023.
[5] Yuki Tatsumi, “Great Eastern Japan Earthquake: ‘Lessons Learned’ for Japanese Defense Policy,” Stimson Center, November 2021, p. 11.
[6] 簡単にまとめると、米軍の統合部隊には3つのレベルがある。統合軍を頂点とし、その下に副統合軍(すなわち下位の統合軍または統合部隊)、そして最後に、具体的な対象を持つ統合任務部隊がある。「統合部隊」は、厳密にはこれらのどのレベルも指すことができるが、この参加者は中間レベルにあるものを指し、統合軍司令官が本来の業務とは別に、統合任務部隊や副統合軍の支援を受けつつ、危機対応の全体的な指揮を兼務する可能性に言及していた。
[7] 共同統合作戦調整所の設立については以下を参照のこと。Vince Little, “Control Hub Used to Direct Exercise,” Stars and Stripes, November 17, 2007 at https://www.stripes.com/news/control-hub-used-to-direct-exercise-1.71252
[8] 防衛省『令和4年版防衛白書』、 p. 285。
[9] 同上。
[10] “Japan and US set up military intelligence team at Yokota Air Base,” Kyodo News, December 18, 2022. 二国間情報分析セルは、米国のプレスリリースの一部も含めて、しばしば 「intelligence analysis cell(諜報分析セル)」と呼ばれるが、発足時に発表された正式な英語名は「Bilateral Information Analysis Cell 」である。日本語ではどちらの意味にもなる。
[11] NEXTアライアンス会議の関連イベントに参加した在日米軍将校によるコメント(2023年3月13日)。
[12] 防衛省『令和4年版防衛白書』、p. 286。
[13] James Kraska and Yusuke Saito, “The Law of Military Operations and Self-Defense in the US-Japan Alliance,” Naval War College Review, Summer 2020, Vol 73. No. 3. 米国大統領も同国憲法の範囲内で権限を行使しなければならないし、それが長期にわたって議会に制限されることもある。重要なのは、米国大統領は日本の首相に比べてはるかに広い裁量権で武力行使を命じることができるという点だ。
[14] 同上。
[15] 日本の法律は、「最後の手段」が使えるのは、攻撃を「排除し、我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がない」時としている。外務省「日本の安全保障政策: 安全保障法制の整備」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/nsp/page1w_000098.html)を参照のこと。
[16] これは、「重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」として知られている。
[17] 防衛省『令和4年版防衛白書』、p. 225。
[18] See James L. Schoff, Douglas E. Rake, and Joshua Levy, “A High-Tech Alliance: Challenges and Opportunities for US-Japan Science and Technology Collaboration,” Carnegie Endowment for International Peace, July 29, 2021 at https://carnegieendowment.org/2021/07/29/high-tech-alliance-challenges-and-opportunities-for-u.s.-japan-science-and-technology-collaboration-pub-85012
[19] 2023年に東京で行われたNEXTアライアンス会議において、ある元自衛官が発表した図。
[20] BMD統合任務部隊については防衛省『平成21年版防衛白書』(p. 192)を参照のこと。北朝鮮のミサイル発射については以下を参照のこと。Jon Herskovitz, “North Korea to Launch Rocket,” Reuters, February 19, 2009, at https://www.reuters.com/article/uk-korea-north-satellite-idUKTRE51N0GT20090224
[21] 防衛省『令和4年版防衛白書』、p. 214。
[22] 防衛省「国家防衛戦略について」(2022年12月 16日)、p. 23、https://www.mod.go.jp/j/policy/agenda/guideline/strategy/pdf/strategy.pdf。
[23] 円卓会議「新たな挑戦に向けた指揮関係に関する日米タスクフォース」(2022年12月21日)で、ある元自衛官が提示した概念図。
[24] Kana Inagaki and Leo Lewis, “Is Japan’s Military Fit for Purpose?” Financial Times, May 4, 2023 available at https://www.ft.com/content/2e8dd852-47d3-4276-aabb-21bccb31dff0
[25] Yusuke Takeuchi, “Japan’s Self-Defense Forces Miss Recruiting Target by More Than Half,” Nikkei Asia, April 19, 2023. https://asia.nikkei.com/Politics/Defense/Japan-s-Self-Defense-Forces-miss-recruiting-target-by-more-than-half
[26] 円卓会議「新たな挑戦に向けた指揮関係に関する日米タスクフォース」(2022年12月21日)で、ある元自衛官が提示した概念図。
[27] See Section 1087 of the James M. Inhofe National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2023, HR 7776, became Public Law No: 117-263 on December 23, 2022. Available on Congress.Gov at https://www.congress.gov/bill/117th-congress/house-bill/7776
[28] Bryan Clark, “How to Keep Was with China from Being a Pick-up Game,” Defense One, November 2, 2022. https://www.defenseone.com/ideas/2022/11/how-keep-war-china-being-pick-game/379266/
[29] Admiral Walter F. Doran, “Pacific Fleet Focuses on Warfighting,” August 2003, Proceedings, Vol. 129/8/1,206, US Naval Institute available at https://www.usni.org/magazines/proceedings/2003/august/pacific-fleet-focuses-war-fighting
[30] 自衛隊は、攻撃を受けた場合、国会の承認がなくてもただちに自衛のための武力行使ができる。
[31] この制限には、国会の承認を受けた「対処基本計画」に従わなければならないこと、武力行使は必要最小限度の範囲に留めなければならないことなどが含まれる。
[32] 防衛省『令和4年版防衛白書』、p. 226。
[33] 同上。
[34] 内閣官房「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf)を参照のこと。
[35] 防衛省『令和4年版防衛白書』、p. 229を参照のこと。
[36] 防衛省『令和4年版防衛白書』、p. 278。
[37] 防衛省『令和元年版防衛白書』、p. 281。
[38] 笹川平和財団客員研究員の中村進が記事「台湾危機と日米の対応 ―日本はどう準備・対応すべきか? ―」(2021年5月28日)のために作成した表(https://www.spf.org/iina/articles/nakamura_05.html)に筆者が変更を加えたもの。
[39] 外務省「日米防衛協力のための指針」(2015年4月27日)、p. 6、 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000078187.pdf
[40] Tim Starks, “China getting bolder and better in cyberspace, spy chiefs warn,” The Washington Post, March 9, 2023.
[41] See “Joint Cybersecurity Advisory: People’s Republic of China State-Sponsored Cyber Actor Living off the Land to Evade Detection,” issued May 23, 2023 at https://media.defense.gov/2023/May/24/2003229517/-1/-1/0/CSA_Living_off_the_Land.PDF
[42] Tim Starks, “China will ‘probably’ breach US cybersecurity defenses within 5 years, file says,” The Washington Post, April 25, 2023.
[43] 筆者による日本政府関係者へのインタビュー(2023年5月25日)。
[44] 筆者による米軍将校へのインタビュー(2023年3月13日)。
[45] See United Nations Command-Rear on the UNC website at https://www.unc.mil/Organization/UNC-Rear/
[46] Gordon Lubold and Ian Talley, “Seven Countries Join to Hunt Ships Smuggling Fuel to North Korea,” The Wall Street Journal, September 14, 2018 at https://www.wsj.com/articles/new-u-s-led-coalition-to-track-illicit-fuel-shipments-to-north-korea-1536922923
[47] “Japan Diet Oks Defense Cooperation Pacts with Australia, Britain,” Kyodo News, April 28, 2023 at https://english.kyodonews.net/news/2023/04/2ace780e96ff-japan-diet-oks-defense-cooperation-pacts-with-australia-britain.html
[48] 外務省「日米防衛協力のための指針」(2015年4月27日)、p. 3、 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000078187.pdf。
[49] 外務省「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(2007年8月10日)https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kyotei_0708.htmlを参照のこと。
[50] 東京で2023年に開催されたNEXTアライアンス会議(2023年3月11日)で、ある元自衛官が発表した表。なお、「2015 GL」は、2015年に合意された「日米防衛協力のための指針」を指す。
[51] US Department of Defense, “DoD Announces Release of JADC2 Implementation Plan,” March 17, 2022 at https://www.defense.gov/News/Releases/Release/Article/2970094/dod-announces-release-of-jadc2-implementation-plan/
[52] 2023年3月に東京で行われたNEXTアライアンス会議の議論をもとに、筆者が作成した簡単な組織図。
[53] Mariel Cooley, “Indo-Pacific Could Serve as Model for Combatant Command Info Sharing,” C4ISNET, December 9, 2022 at https://www.c4isrnet.com/thought-leadership/2022/12/09/indo-pacific-could-serve-as-model-for-combatant-command-info-sharing/
[54] 2023年3月に東京で行われたNEXTアライアンス会議の議論をもとに、筆者が作成した簡単な組織図。
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